第68章 漆黒の追跡者
「お前らは一体……」
『貴様が知る必要はない』
抵抗の様子がないのを確認して、キツくロープを結び口に新しいガムテープを貼った。
『用が済んだら解放してやる。それまで大人しくしていろ』
廃屋を出て面を外し森の外へ向かう。入口について人気のないことを確認してマスクも取った。街中に比べて比較的街灯が少ないから、星がよく見える。
ビルの間から北極星と北斗七星が輝いているのが見えた。
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規模の大きい操作会議が開かれるらしい。それぞれ事件のあった県の警部、そしてあの毛利小五郎も招集されると。ということは、あの少年も……。
「また見てんのか」
『いいじゃない。気になるんだもの』
警視庁前に止めた車の中。ベルモットを待つ間、操作資料を眺める。たぶん、今日の会議で更に情報は増えるだろう。
コンコン、と窓がノックされる。そちらを見ればメガネをかけた刑事。するりと私の隣に乗り込むと、静かに車が動き出した。隣の人物がマスクを取ると、綺麗な金髪がこぼれるように出てきた。
「もう私が見ている必要はなさそうだわ。管理官の姿も様になってたし」
『そっか。で、何か進展はあったの?』
「……まだ犯行は続きそうってことくらいかしら」
ベルモットに差し出されたノートを受け取ってパラパラとめくる。被害者の住所も職業も年齢もバラバラ。でも、犯行の仕方からして何か共通点はあるはず。
そして、やっぱり気になるのは麻雀牌。筒子の丸が赤く塗られているのも、その位置が全て違うのも……後ろに書かれた黒い線とアルファベットも。
『ん?筒子の一もあったの?』
「長野の事件だけね」
ということは、残る犯行は2回……?残った丸の数からすればおそらくそうなるのだろうけど。
『これ、借りててもいい?』
「ええ。必要なくなったら処分もしておいて」
『わかった。ありがと』
アジトの駐車場につくと、ジンはすぐに建物内へ行ってしまった。私はベルモットに引き止められたから、そこに立ち止まる。
『何の話?』
「私との約束、守ってくれるわよね?」
『……やっぱり』
それ以上は声には出さなかったけど、意味は伝わっただろう。あの少年はまたこの事件に関わってくる。
『貴女が守ってくれるならね……話はそれだけ?』
「それと、いくら心配だからって深く関わり過ぎない方がいいわよ」