第66章 赤と黒のクラッシュ
ブレーキが擦れる音を立てながら車が横滑りしていき……横転仕掛けたところでガードレールに当たって止まった。
「……」
ジンが車をおりた。私も一度外へ出る。すると、バンの助手席のドアが開いてキールが自身の足でおりてきた。腕を怪我したのか、上着に赤いシミが広がっている。
「どういうことだ?」
ジンがキールに聞く。どうやら意識は2、3日前に戻っていたらしく、FBIの無線のやり取りを聞いて私達が追ってきていることに気づき……ということらしい。
「キールも無事奪還できた事ですしズラかりやすか!」
「ああ……こんな大役をたった1人で引き受けた馬鹿なFBIを始末してからな。殺れ、キャンティ」
「あいよ!」
キャンティがライフルを構える。しかし、次の瞬間。オレンジ色の光に包まれたかと思えば、轟音と共に車が燃え上がった。
「あの馬鹿、信管抜かずにポケットにしまっていたんじゃ……」
「さっき車がぶつかったはずみに偶然信管がはまったのかも……」
真偽はどうであれ、あの車を運転してしたFBIは死んだようだ。背後で急ブレーキをかける音がして振り返った。
『まずいよ、見られた』
「チッ!野次馬連中が……」
後ろからも前からも車が来て、燃え上がる車に気づいて車を止める。
「キールは俺の車に……ズラかるぞ」
私もキールと一緒に後部座席に乗り込んだ。
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あの場所から少し離れたところでウォッカはバイクを乗り捨て、今はジンの車の運転席にいる。
『キール、腕見せて』
「えっ……ああ、大丈夫よこのくらい」
『いいから』
止血するためにキールの腕に持っていたハンカチを強く結んだ。
キールの話によると、病院側は本当に何も知らなかったようだ。そして、あの病院には手を出すなとも。
ジンも今はそうするらしい。でも、引っかかる部分もあるようで。
「あの赤井がこうも易々とキールを奪い返される策を立てていたとは……何かまだ裏があるんじゃねえかとな」
『そうね……』
ジンがここまで読むことを見越していたとしたら……赤井なら無い話ではない。
「所詮それだけの男だったって事じゃないんですかい?」
ウォッカのその言葉に答える人は誰もいなかった。
アジトに戻り、キールは検査の為に医務室へ。あの方への報告は既にジンが済ませたようだ。
「兄貴?マティーニも……」