第66章 赤と黒のクラッシュ
「どうやら3台で打ち止めみたいだねえ!」
病院の駐車場入口を見張っていたキャンティから連絡が入った。ダークブルーのバンが3台。この中に当たりはあるのか、それとも全部囮か……。
1台目をキャンティ、2台目をコルン、3台目をウォッカがそれぞれ追跡。ジンはこのまま病院周辺を張る。私も車の中で待機。
『ウォッカ、気をつけてね』
「ええ、それじゃあ……」
ウォッカがバイクで走り去っていくのを見送ってジンの方を向き直った。
『ヤツってベルモット?』
「……ああ」
ついさっきのジンとウォッカの会話。ベルモットからはまだ何の連絡もない。でも、ジンはそれを当てにするつもりはないらしく、あの方からの命令だから仕方なくって感じ。
数分後、3人から車内をスキャンしたデータが送られてきた。サーモグラフィーで中の人数も発信器もバッチリ確認できる。でも、これだけじゃ判断に困る。
「お待たせジン……」
無線からベルモットの声がした。どうやら赤井の車を追っていたらしい。そして、その車が1番近いのは……コルンが追ってる2台目。
「じゃあコルンの車で決まりだよ!」
キャンティの興奮したような声が聞こえる。
「すごい抜きまくってる……あの調子だと1分たらずで……」
ベルモットの焦るような声も聞こえる。でもなぁ……
『2台目はないと思う……』
「……ああ」
あの男が派手に動いて簡単に護衛している車に目を向けさせるようなことをするはずがない。私達をおびき寄せる為の罠だろう。
「……てめぇはどっちを選ぶ」
ジンの試すような声にため息をついた。1台目か3台目。きっともう答えは出てるだろうに……意地が悪い。
発信器の反応があったとしてもFBIだとは限らないし。それに、組織の手によって起こされた3つの騒ぎ。あの病院が1番近いだろうが、それ以外の病院にも患者は流れてる。その状況で昏睡状態の患者の転院を受け入れるところはまず無い。
組織が二度とそこを探さないと踏んで、連れ出すと見せかけて同じ病院に戻る。それに該当するのは……
『……3台目?』
「だろうな」
ジンは全員に指示を出し、不敵に笑って車を発進させた。
『あ、あの車!』
しばらく走ると目的の車とその後ろを走るウォッカのバイク。この車の後ろにも3台のバイクが順々についてくる。よし、これなら……
『えっ?!』