第65章 戒めの傷跡※
シたのは1回だけで、その後のシャワーも一緒に浴びたけど何もされなかった。もしかしたらベッドで……と少し身構えもしたけど、その様子もない。やっぱりまだ万全の状態じゃないんだろう……と思いたい。飽きられたわけじゃないよね?
今日は外に出る用事もないし、キャミソールとショートパンツだけを身につける。そして、テレビをつけて音楽を流し簡単な食事を用意する。ラジオもかけようか……とスイッチに指を触れそうになった時。
「……うるせえ」
ジンの不機嫌そうな声が響いた。
『うるさくない』
そう言ったのにテレビが消された。続いて音楽も。
『ねえ、やだ。つけたままでいいでしょ』
もう一度テレビをつけようとリモコンに手を伸ばしたが、それは虚しくも空を切った。
「何もよくねえよ。1回で我慢してやったろ」
我慢ということは……飽きられたわけじゃなさそう。ちょっとほっとした。
でも、それとこれとは話が別だ。リモコンを掴み取れなかったことにムッとしながら顔を上げると……鏡に映る自分の姿が目に入って慌てて逸らす。逸らした先にあったジンの顔すらまともに見れない。
さっき見てしまった、自分が達した瞬間のあの顔が頭から離れない。あの顔を抱かれる度に晒していたのかと思うと、全身が茹だったようにうに熱くなる。
音でかき消せたらと思ったけど今は無理っぽい。いろんなことを考えようにも、ほんの少し気を抜くだけであの光景に思考が支配される。
「いつものことだろ。今更気にすんな」
私の思考を読んだかのような言葉に肩が揺れた。明らかな動揺を隠すように視線を逸らしたまま答える。
『うるさい。忘れたいの。話しかけないで』
「……何度もイかせた後の方がすげえ顔してるぞ」
『ちょっと待って、何それ』
「知りてえなら今度見せてやる」
『や、それはいい……』
あの顔の上がある……?知りたくなかった事実だ。
ジンはほとんど表情が変わらないのに。
薄らと顔が赤くなったり、息が乱れたり、イく瞬間に目の辺りに力が入ったり……やっぱり、普段と比べれば結構違うかも。それでも私のあの顔に比べれば……と、自ら思い出してため息をついた。しばらくの間はずっとついてまわるんだろう。
軽い食事を終えて、ひと息。片付けを終えてソファ……ジンの左側に座る。ジンの長い髪を避けて左頬の傷跡を見つめた。