第64章 ブラックインパクト
コナンside―
奴らの襲撃があった翌日。早朝から博士の家に来ていた。
あの声どこかで聞いたような……くそっ、あと少しで思い出せそうなのに……。
そんな時に飛び込んできたニュースの言葉。トロピカルランドの特集か……?
―残念だけどここまでね。
「あーっ!!」
「ぶっ……ゴホッゴホッ……急にどうしたんじゃ?!」
俺が急に大きな声を出したせいで博士がむせた。灰原もあきれたようにため息をつく。いや、それどころじゃなくて。
「もう1人いたんだ」
「何がよ」
「昨日博士と灰原と分かれた後、盗聴器からもう1人女の声がした」
「聞き間違いじゃないの?」
「違う。ベルモットでもキールでもキャンティでもねえ……もう1人。しかもそいつ……俺が薬を飲まされた時にそばにいた奴だ」
灰原に詰め寄って聞いた。
「心当たりねえか?女でコードネームを持ってる奴に」
「……どんな人?」
「それは……見てねえけど」
あの時は気を失いかけてたし、昨日も屋上にいたようだが姿は見ていない。
「じゃあ答えられないわ」
「なんでだよ?!知ってんなら教えろよ!」
「貴方ねえ!」
灰原が机をダンっと叩いて立ち上がった。
「どれだけ危険なことをしてるかまだわからないの?!偶然なのかもしれないけど、貴方が仕掛けた盗聴器のせいで毛利探偵は死にかけたのよ?!」
「そ、それは……」
「今回はFBIが協力してくれたからいいものの、次があるかなんてわからないじゃない!貴方のその正義感と好奇心で危険に晒されるのは貴方1人じゃないのよ!」
ここまで声を荒らげる灰原を見るのは初めてだった。その様子はただ組織を恐れているだけには見えなくて。
「今、貴方が手をかけてるのは……本来であれば触ることはおろか、見ることさえ許されないパンドラの箱なのよ。それに彼女は……」
「彼女は?」
「っ……とにかく、今私から話せることはないわ」
そう言い残して灰原は地下室へ向かってしまった。あの様子じゃ、問い詰めたところで彼女は何も話さないだろう。でもなんだ?灰原のあの感じ……ジンやベルモットの話をする時とは全く違う気がする。
「……ちっ」
思わず舌打ちをしたが、今は水無怜奈のことが優先か……灰原なら組織の奴らが近づいてきても匂いでわかるって言ってたし。今はその感覚を信じるしかないだろう。