第64章 ブラックインパクト
「聞きたい事がある。お前とシェリーの関係だ……」
なんでシェリー?と思ったけど、ピスコの一件の時にそんなようなこと言ってたな……でも、今回のことを考えればその時に盗聴器をしかけたのもあの少年。
「10秒くれてやる……」
どうする……どうやったら止められる?下手なことを言えば、かえって毛利小五郎を危険にさらすだけだ。ちらりとベルモットを見ると、彼女も彼女で考えてはいるようだが……悩んでいるようには見えない。
「10……9……」
ジンがカウントを始めた。策は思いつかないのに、カウントはどんどん減っていく。
「4……3……2……」
ここまでか……と唇を噛んだ。が、聞こえてきたガラスの割れる音は弾が貫通したようには聞こえなくて。
「サ、サッカーボール?」
「コラァ!どこのどいつだ!」
キャンティの声をかき消すような怒声……これは毛利小五郎の声だ。
「ごめんなさーい!」
それと少年の声も。
「それより競馬どうなった?そのイヤホンで聞いてたんでしょ?」
「競馬?」
ウォッカが困惑したように呟いた。なんて紛らわしいことを……最悪の場合死んでたんだぞ。
「フッ……どうやら彼は無関係のようね」
「殺れ……ガキもろとも」
「あいよ……」
「待ってよ!確証もないのに、警察と関わりの深い彼を殺ったりしたら……」
そう言うベルモットにジンは拳銃を向けた。
「くどいぞ、ベルモット!お前、あの探偵と何かあるのか?」
「あら……あったらどうなの?」
ピリピリと肌を刺す空気にため息をついた。
『ベルモットの言う通りだと思うよ。今急いで殺らなくても、この先だって機会はあるはずだし』
私が声を上げるとは思わなかったのか、ジンとベルモットの視線が向けられる。言葉に詰まりながらも首を傾げた。
「フン……まあいい……」
ジンの拳銃がしまわれると、空気が緩んだ。でもまだ終わってはくれないらしい。
「こいつを仕掛けたヤツは迂闊にも指紋を残している……」
ジンが話し始めると、少し強い風が吹いた。風に流れる髪を避けながら、ただ何となく後ろを……探偵事務所とは反対側に視線を向けた。
『ん……?』
今何かが光ったような……次の瞬間、私の真横をすり抜けた弾丸がジンの持っていた盗聴器を吹き飛ばした。
『っ……?!』
「後ろ……8時の方向……」