第64章 ブラックインパクト
「じゃあ私は先に行ってるけど……」
ベルモットは前を向いたまま言った。その後に続いた言葉の感じがなんだか引っかかる。
「この暗殺劇……何か嫌な感じがするから……」
……もしかして、ベルモットもあの少年が絡んでいることに気づいてる?そう思わずにはいられなかった。
「何か気になることでもあるのか?ベルモット」
「いや……ただそんな予感がするだけ。気にしないで」
ジンの問いにそう答えてベルモットは行ってしまった。それに続くようにキールもバイクに跨った。
『キール、気をつけてね』
「……ええ」
「じゃあアタイ達も行くか……アンタ一緒に来なよ!」
キャンティがそう言って私の腕を引いた。
『私が一緒にいたら気が散るんじゃない?』
「そんなことないさ!」
『でも、私が落ち着かないから……ジンと一緒に行くよ。いい報告待ってるから』
「なんだい……つれないねぇ……」
そう言いながらもキャンティは腕を離した。
「……行くぞ」
『あ、うん』
ジンの車の後部座席に乗り込んだ。キールの服がたたんでおいてある。できることならすぐに確認したいけど、いきなり触るのは不自然だろうし……無線で連絡を取り合えば絶対にノイズが入る。誰かがそれを指摘しなければいいんだけど。
それぞれ配置についた。ここまで来る間、会話らしい会話はほとんどしていない。1つ目の計画で終わらせられなかったことが原因だろう。
キールはまだ到着していないのか連絡がまだ来ない。車が止まってからキールの服に手を伸ばし、たたみ直しながら盗聴器の類を探す。
袖口や襟の裏を指でなぞるけどそれらしいものは見当たらない。ジャケットもスカートも探したけど……ついてない。
ならば……あとは靴か。
「ねえ……まだかい?ジン」
靴に手を伸ばしかけたところでキャンティの声が聞こえて、手を止めた。キャンティが焦れてきているらしい。当然だろう。1つ目の計画では出番がなくなってしまったんだし。
「焦るなキャンティ……」
今のうちに……と思うのに体が動かない。これも裏切りに値する行為だからだろうか。
「どーでもいいけど、そっちの声ノイズだらけで聞き取りづらいよ!」
キャンティの声に思わず唇を噛んだ。
「何すか、兄貴?」
「声を立てるな……」
ジンは後部座席の方に乗り出してきて……キールの靴を手に取った。