第64章 ブラックインパクト
「え、援護だって?!」
ジンから説明を聞いたキャンティが声を荒らげた。でも、確実に仕留められなきゃ意味がない。
ウォッカがキャンティをたしなめていると、そこにベルモットがバイクでやってきた。
「あら、貴女も来たのね」
『キールのバイクをね……でもこれ以上の出番はなさそうだし、大人しく傍観してるわ』
「……そう」
その後の説明を聞くと……ベルモットが土門の乗る車の前で転倒して車を止め、そこに駆け寄ってくるであろうところをキールが仕留める。ベルモットは変装をしていて、その顔は泥参会の毒島という女のもの……ずっと聞きそびれたままだけど、泥参会って何者なんだろう。
キールはライダースーツとブーツに着替えていたらしい。あとでタイミングを見て仕掛けられているものを探そう。
目が合うとキールはフッと微笑んだ。
「久しぶりね」
『直接会うのっていつぶりかしら?テレビでよく見るから、私は久しぶりって感じでもないんだけど』
「これでもそっちには顔を出してるのよ」
『そうなんだ』
顔を出すといっても月に1度あるかないかくらいの頻度だろう。今や人気アナウンサーとなったのだからそんなに時間に余裕もないだろうし、たぶん外を歩くのにも気を使ってると思うし。
「場所……どこだ?ジン……」
コルンの声に振り返った。
「DJを仕留めるのは……ベインBだ……」
よくこんな隠語が思いつくなっていつも思う。気付けば難しいものでもないけど、私だったら英語にすることくらいしか考えられないし。
「私のバイクはどこかしら?」
『あっちのコンテナの辺りに止めてあるわ』
「ありがと……」
キールは服を着替えたか……ジンの車にあるはずだ。上手く探せるだろうか。
「ねぇ、キール……」
ベルモットがバイクの方へ向かおうとしたキールに声をかけた。
「貴女……まさかコレじゃないでしょうね?」
そう言ってベルモットはバイクをコンコンと叩いた。
「バカね……そんなわけないでしょ……」
キールはそう言ってバイクの方へ向かった。
『こんな時に……ずいぶんタチの悪い冗談ね』
「……」
ベルモットは何も言わずにバイクのエンジンをふかした。
理解するのにちょっとだけ時間が必要だった。あれが、ただ叩いたわけじゃなくてノックした……NOCを示したものだというのを。