第64章 ブラックインパクト
キールがジン達と落ち合う前に会ったのは彼しかいないし、まさかそこにいた子供が仕掛けただなんて考えるわけもない。
でも……あの少年がそんなリスクの高いことをするだろうか。組織のことを探ろうとしているのは間違いないだろうけど、それでも他人を死なせるかもしれないような選択はしないと思う。
別の誰かに仕掛けようとしたものが、何かの拍子でキールに……どちらにしても、盗聴しようとするのはいただけないけど。
このまま仕掛けられたものに誰も気づかずに土門を始末し、どこかでタイミングをみてキールに会えればいいが……こういう時に限ってことは上手く進んでくれないのだ。
13時を少し過ぎた頃、ジンから電話が来た。鼓動が速くなっていくのを感じながら通話ボタンを押す。
『……上手くいった?』
「……1時間後、例の倉庫に」
『失敗したの?』
「……後で話す。キールのバイクで来い。地図も忘れるなよ」
それだけ言われて電話は切れた。
話し方からして、失敗したわけじゃなさそうだけど、それでも計画を変更しなければならないようだ。ブーツに履き替えてヘルメットと地図をを持って部屋を出た。キールのバイク……どんなやつだっけ?
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倉庫についたのは私が1番早かったみたいだ。車が入れるように入口の扉を開け、中に入る。バイクはコンテナの辺りに止めた。
十数分後、来たのはキャンティの車。ヘルメットを外して手を振ると、車が止まってすぐにキャンティがおりてきた。
「マティーニ!アンタも来たんだね!」
『ええ、ジンに呼ばれたの。1つ目の計画じゃ上手くいかなかったの?』
「急な雨でさ……傘越しじゃ確率が下がるからって撃たせて貰えなかったんだよ」
『そう……残念ね』
「でも次こそは確実に仕留めてやるさ!あの女じゃなくてアンタが加わってたならよかったのに」
『あの女?』
「ベルモットだよ!ジンがあの方の指示だって言うから我慢してやるけど……」
その時エンジン音が聞こえてきて、もう1台の車……ジンの車が入ってきた。乗っているのはジンとウォッカと……キール?
「マティーニ……」
『お疲れ様。ベルモットは?』
おりてきたウォッカにそう聞いた。
「準備があるとかで……またすぐに合流するそうです」
『そうなんだ』
そう言って持ってきた地図を差し出した。