第6章 姉妹って素敵ね
「……どうぞ。難しいと思うけど」
全て英語で書かれた資料。それなりに言葉は理解できるけど、内容が難しい……製薬についてだろうか。
『へえ、本当に難しいことしか書いてないね』
「読めるのね。専門用語ばっかりなのに……」
『まあ読むくらいなら。製薬の知識はほとんどないけど』
ありがと、と言って資料を返す。
『ねえ、アメリカの学校って楽しい?』
そう聞くと、志保の顔が少し暗くなる。
「……まあ、それなりに」
『あっちでなんかあった?』
「別に……」
そのまま俯いてしまった。
『ごめん、嫌なこと聞いたかな』
「気にしないで」
『何かあるなら、話して欲しい……聞くことしかできないけど』
志保の手を握ると、少し顔を上げてくれる。
「……私の両親、父が日本人、母は日本とイギリスのハーフ。東洋系の顔立ちのせいか、あまりいい印象じゃないみたいで……」
要は嫌がらせがあるんだろう……身寄りがいなくて心細いだろうに。
『悲しいわね……外見が違くても、血の色は同じなのに』
「え……」
そうでしょ?と微笑む。そして、紙に自分の携帯番号を書いて渡す。
『もし、辛かったり、悲しかったりすることがあれば連絡してね……今みたいに聞くことしかできないけど。もちろん、楽しいことがあったとかでも……』
「……ありがとう」
そう言って笑ってくれた。よかった、少しは元気になっただろうか。
『あ、お姉さんいるんだよね?帰ってきてから会えた?』
志保は首を振る。
「会いたいけど、監視が付くからあまり……」
『……監視か。ちょっと待ってて』
私はベルモットへ電話をかけた。すぐに電話が取られる。
『もしもし、私。今いい?』
「あら、マティーニ。何かしら」
『志保がお姉さんに会いたいって言うんだけど……』
「監視付きならいいって話したわよ」
『私が代わりに付くのは駄目?』
「……それならいいわ。でも、どこで会わせる気?」
運転できないでしょ、と言われハッとする。確かにまだ免許ないし。
『……私の部屋に連れてく』
「わかったわ。終わったらそれぞれ送り届けてね」
それじゃと電話が切れる。
「本当にいいの?」
『いいよ。カフェとか行けたら良かったんだけど』
「ううん。大丈夫」
お姉ちゃんに連絡する、と言う志保の顔はとても嬉しそうだった。