第62章 探りを入れる
「日本一の名探偵、あなたの毛利小五郎です」
『は、ぁ……』
差し出された名刺を両手で受け取る。にしても……名探偵って自分で言うんだ。日本一……しかもあなたのって言ったよね……いや、悪いことじゃないと思うけど、どうにもリアクションに困る。チラッとコナン君に視線を向けたけど肩をすくめられただけだった。この感じは普通なんだろうか……。
「どんなことでもご相談ください」
『ええ……困ったことがあったら頼らせていただきます』
「お待ちしてますよ……ところでお名前をお聞きしても?それとよろしければ連絡を……」
「おじさん、蘭姉ちゃんに言うよ」
コナン君が毛利小五郎のスーツの裾を引っ張りながらジト目で言う。
「んだとぉ……!」
「ごめんね亜夜さん」
『う、うん……?』
コナン君……無意識なのかあえてなのか知らないけど、今私の名前言ったね……まあ知られたっていいんだけどさ。
私が微妙な表情を浮かべたからなのか、コナン君はあっ……とでも言いたげな顔をする。もう手遅れだよ。
「おお、亜夜さんというんですなぁ。それでは、私が今までに解決してきた事件のことを……」
「あ、亜夜さん、この後用事があるんだよねっ?!急いだ方がいいんじゃないかなっ!」
……助け舟ということでいいんだろうか。話そうとしてくれた所申し訳ないが、解決した事件のことは興味がない。それに、私はしたことを隠す側だから。
『そうなんです……だから今日はこれで。また機会があったら聞かせてください』
「しかし、この時間に女性1人は危険ですなぁ。お送りしましょうか?」
『大丈夫ですよ。困ったら交番に駆け込みます』
残ったアイスコーヒーを一気に飲み干して席を立った。さっさと会計を済ませ、手を振ってくれる梓さんとコナン君に手を振り返して……先程来た道を引き返した。
本当にあれが名探偵……?まともに会話をしたのはさっきが初めてだけど、どうしてあの男が名探偵になり得たのか不思議でしかない。今度会った時にそれとなく聞いてみようか……。
考え込んでいるうちに新出病院についた。先程はあった車がない。ということは今は無人だろうか。それならば……とヘアピンの入ったケースを取り出して取り出そうと……なんだこれ、開かないんだけど。
『わっ……』