第62章 探りを入れる
夕方に近い時間だ。それでも席は半分以上埋まっている。メニューを眺めていると、お冷とおしぼりが目の前に置かれた。
『どうしようかな……』
朝は軽く食べただけ。昼は食べてないしきっと帰りも遅くなる。メインの食事と飲み物……デザートまでガッツリ食べようかな。
『えっと……カラスミパスタとアイスコーヒー、食後にこのケーキを』
「かしこまりました〜!お待ちくださいね!」
少しして目の前にカラスミパスタとアイスコーヒーが置かれた。
「いただきます」
食事をしながら梓さんと世間話を交わす。新しくできたカフェのことや新作のコスメ……私はその手の情報に疎いから曖昧な返事しか返せない。ちょっと勉強しないとまずいかな……。
『ふぅ……』
全て食べ終えて一息。満たされたお腹を軽く撫でる。さすがに欲張り過ぎたかもしれない。追加で頼んだアイスコーヒーは1口分減っただけだ。
「亜夜さん、周りに料理上手な知り合いっていませんか?」
『うーん』
「女性でも男性でもいいんですけど……いたらスカウトさせてくださいね!」
その時ドアのベルが鳴った。なんとなく視線を向ける。
「あ、亜夜さんだ!こんばんは」
『あら、コナン君。こんばんは』
「隣座ってもいい?」
『どうぞ』
こんばんはって……もうそんな時間か。確かに店の外は薄暗くなっている。
「珍しいわね。蘭ちゃんは?」
梓さんがそう聞いた。
「蘭姉ちゃんは園子姉ちゃんの家に泊まるんだって。だから今日はここでご飯。すぐにおじさんも来ると思うよ」
「そう。じゃあお水は2つね」
すぐにまたドアのベルが鳴る。
「なっ……おい!なんでお前は平然と女性の横に座ってんだ!」
「うわぁっ!」
入って来た男性……毛利小五郎はコナン君を掴み上げる。
「ったく……すみません」
『いえ……コナン君とは知り合いですし、大丈夫ですよ』
「お前、この美しいお嬢さんと知り合いなのか?」
「うん。蘭姉ちゃんも知ってるよ……ていうか、おじさんも会ったことあるでしょ」
「なにィ?」
『あの、ゲーム会社の制作発表の時に……でも、毛利さんは体調悪そうにされてましたし覚えてなくても……』
「なっ、そうでしたか。申し訳ない、あなたのような方を覚えていないなんて……それでは改めて」
スっと目の前に名刺が差し出された。