第59章 XXX ※
ベッドに腰掛け、私に背を向けてタバコを吸うジンを見た。
今日私の意識が飛んでないのは、いつもより回数が少なかったせいだと思う。イった回数こそ多いけど、その深さというか……身体は疲れてるけど、何か物足りない。
気になるのは、ジンが満足したからやめたのか、それともその気が失せたからやめたのか。
『ジン、私まだできるよ……』
後者でないことを願いながら、その背中に声をかける。
「……」
ジンは何も言わずに灰皿にタバコを押し付けた。その様子を見て、気持ちがどんどん悪い方へ引っ張られていく。
『……私とするの飽きちゃった?』
「……あ?」
『誰かほかにいい相手でも見つかったり?』
大した考えもなしに言葉だけつらつら出てくる。ただ、ジンを不機嫌にするだけかもしれないのに。バーボンが言った、性処理という言葉を肯定するだけかもしれないのに。
『ジンは、私のこと好き?』
「……」
『私はジンのこと好きだよ』
「……そうかよ」
望んでいた言葉はやっぱり返ってこない。好き、じゃなくてもいいのに……結局自分で自分を苦しめただけだ。
『……ごめん、変なこと言って。寝るね』
零れそうになる涙を隠すように、ジンに背を向けて目をギュッと強く閉じた。でも、そんな状態で眠気がやってくるわけもなく。それどころか、いろんな考えが頭の中をぐるぐる回って目が冴えるばかり。
……どれだけの時間が経っただろうか。大きく深呼吸を繰り返していると、やっと眠気が……と思ったのに。
ジンの手が私の髪をそっと梳いた。急にそんなことされて、しかもその手つきが優しくて、また眠気が吹っ飛んでいく。それでも、寝たふりをし続けた。
「……いい相手か」
フッ、と鼻で笑いながらジンがそう呟いた。
「それはてめぇのほうだろ」
飛び起きて否定しようとしたのをどうにか堪えた。ジンが何を思っているのかを知りたくて呼吸を乱さないように……鼓動の速さはもう隠しようがないけど。
「……あんな甘ったるい野郎の方がいいのか」
甘ったるい野郎……バーボンのこと?
……ああ、私だってジンに対してそういうことしてるのか。なんだかんだ理由をつけてバーボンと会って、一度は拒んだキスも最近じゃ受け入れてるし……。
明日、起きたら謝ろう……なんて考えているとジンが隣に寝転がる気配がした。
「……亜夜」
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