第58章 少年探偵団と先生と
『まあ、今に始まったことじゃないんだけど』
ベルモットの動向が知れないのは珍しい話じゃない。あの方のお気に入りということもあって、それを咎める人もいないし。ジンはその秘密主義なところに少なからずイラついているようだけど、それもここ最近の話じゃない。
あの2人にそれなりの関係があったことは嫌でもわかるけど……どちらに聞いたって適当にはぐらかされるだけだ。
秘密主義のことに関しては、バーボンだって例外ではないのだけど。でも、指定された情報は必ず持ってくるし、そういう能力ををあの方もラムも認めてる。余程のことがない限り手は出せない。
「もうすぐ着きますよ」
先に見えたのはお洒落な雰囲気の建物。カップル限定とか言ってたから、もっとこう……ピンクのハートがいっぱいなイメージだったんだけど。
『……なんか思ってたのと違う』
「何か期待してました?」
『……』
車が止まったのを確認して無言でおりる。そして、お店の扉を開けて……後ろから来たバーボンを睨んだ。
『嘘ついたわね……』
店内には子供連れや、1人のサラリーマン、女同士だったり……カップルももちろんいるけど……。
「嘘?何がですか?」
『だって、カップル限定って……』
「あれ、そう言いましたっけ?」
『……白々しい』
「期待してくれてました?」
『してない』
「それにしては結構気合いの入った子格好に見えますけど」
『っ……本当、減らない口ね!』
「すみません。貴女の反応が可愛くて。でもカップル限定のメニューがあるのは本当ですよ」
「あのぉ……2名様でよろしいですか?」
店員の女性が気まずそうに声をかけてくる。その声に2人して笑顔を貼り付けて頷いた。
『……今度から別の人誘いなさい』
案内されたテーブルの上に広げたメニューに視線を落としながら言う。
「女性の知り合いなんてほとんどいませんよ」
『知らない女だって貴方に声をかけられれば、喜んでついてくるわ』
「僕は貴女と一緒にいたいんです」
『……そういうのもやめて』
「つれないですね……」
メニューの上に置いていた手にバーボンの手が重なる。少しだけ視線を上げると、真剣な顔をしたバーボンと目が合った。
「好きな人と時間を共有したいと思うのはおかしな話ではないでしょう?」
『だから……』
「諦めませんからね、僕は」