第58章 少年探偵団と先生と
「すまんのぉ、子供たちが迷惑かけなかった……」
「迷惑なんてかけてないもん!」
「そうです!博士ひどいですよ!」
「博士の車が壊れたせいだろ!」
博士の言葉に食い気味で詰め寄る子供たち。それをオロオロとなだめる博士の様子を見て、思わずコナン君に視線を向けた。
「大丈夫だよ。いつものことだから」
『それならいいんだけど……』
あはは、と笑うコナン君にそう返す。
『……そういえば、みんなはいつも一緒なの?』
「あー……あいつらは少年探偵団っていってるけど……」
『探偵……楽しそうね。さっき言ってたアイちゃんって子も?』
「まあね」
初めて会ったあの時は、もう1人男の子がいるって言ってた。その後で入った子なんだろうか……どんな子なんだろう。
「……そろそろ行こうかの」
博士がそう言うと、子供たちはぞろぞろと車に乗っていく。
「じゃあまたね、亜夜さん」
『うん。蘭ちゃんたちにもよろしく言っておいて』
「わかった!」
コナン君が車に乗り込むと、エンジンがかけられた。車の窓が開いて子供たちが顔を見せる。
「「「またねー!」」」
微笑んで小さく手を振り返した。車が角を曲がったところで、窓からチラリと茶色の髪が見えた気がした。まさか……ね。あんな元気なタイプじゃないし。
スマホを確認すると、数分前にバーボンから連絡が入っていた。今から向かう、と返事を返して歩き出した。
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「え?またですか?」
『今回は女だったけどね……』
目的地のカフェに向かう車の中。ため息混じりにそう言うと、バーボンがクスリと笑った。
「ずいぶん運がいいんですね」
『こんな運早く使い切りたいんだけど』
「でしょうね……でも、今回も何も言われなかったんでしょう?」
『まあね。子供が一緒にいたせいかもしれないけど』
「……子供?」
『たまたま知り合った子供たちよ。変な勘違いしないで。それより……』
助手席のシートから微かに香水の香りがする。私の好きなあの香りが。
『ベルモットと最近会ったの?』
「足に使われただけです。やましいことなんて何もありませんよ」
『そこまで聞いてないわ。どこに滞在してるか知ってる?』
「残念ながら知りません。彼女と何かあったんですか?」
『そんなんじゃない。メールの返信が来ないから気になってるだけ』