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【名探偵コナン】黒の天使

第58章 少年探偵団と先生と


きっと相手は博士という人なんだろう。車直ってよかったね……と送り出そうとしたのに。

「「「えーーー!」」」

『えっ』

残念そうというか、不服そうな声が響く。

「なんで今なんだよ!」

「そうです!タイミングが悪すぎます!」

「先生たちにも会えたのに!」

「おいおい……俺に言うなよ……」

なんか……博士はとても寛容な人なんだろうな……なんて、会ったこともない相手に少し同情した。

スマホの時刻を見ると、私の方の予定も迫ってきている。

『……私もそろそろ行かないと』

「「「えーーー!」」」

「亜夜さんだって予定あるって最初に言ったろ」

「でも……」

俯く歩美ちゃん。その前にしゃがみこんで手を握る。

『ごめんね。今日は無理だけど……また会えるだろうし、その時まで我慢してくれる?』

「ホント?また会える?」

『うん……』

頷きはしたけど、絶対とは言えない。私の住む世界じゃ、人が死ぬことなんて日常茶飯事なんだから。

「絶対だよ!約束だよ!」

約束……か。その言葉に小さく頷いた。

『あ……駐車場までは一緒に行こうか』

「やったぁ!」

嬉しそうに飛び回る子供たちから、先生2人に視線を移す。

『それじゃあ、私たちはこれで。駐車場で子供だけはちょっと不安なので』

「はーい!また会えるといいですねー!」

「子供たちのことよろしくお願いします」

『はい。では』

不安なんていうのは建前で、ただ子供たちを理由にFBIの目から逃げたかっただけだ。そんなことは疑いもしないだろう子供たちは、楽しそうに歌いながら前を進んでいく。

「亜夜さん、予定は?」

『大丈夫。貴方たちを送り届けるだけの時間はあるから』

「そっか。ありがと」

駐車場について、子供たちの後を置いながらバーボンの車を探す。まだ時間の前だし来てないか。

「あ!博士!」

突かれたように走り出した子供たちの向かう先にあったのは、黄色のビートル。ピスコの一件の時に、杯戸シティホテルの前にあったあの車。

車から出てきたのは恰幅のいい男。

「すまなかったのぉ。思いのほか時間がかかってしまって」

「全然!亜夜お姉さんにも先生たちにも会えたし!」

「亜夜お姉さん?その人のことかの?」

『……どうも』

上手く笑えているか……自信ないな。
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