第57章 天国へのカウントダウン
『はぁ……』
さっさと全て処分すればいいのに。誰かに見られるかもしれない、という理由をつけて先延ばしにし続けてきた結果が今だ。
クローゼットを閉めて、今度はパソコンを立ち上げた。そして、原のパソコンのデータが入ったUSBを差し込む。読み込めたものをかたっぱしから開いて中身を確認していく。
「……何してる」
急に後ろから声をかけられて振り返った。
『いちいち気配消すのやめてくれない?』
「お前が気づかねえだけだろ」
後ろからパソコンの画面を覗き込まれる。
「……原のデータか」
『そう。何かめぼしい情報があるかもしれないでしょ』
「ずっと眠い眠い言ってたろ」
スマホの時刻は真夜中より夜明けに近い時間。充電も切れそうだからケーブルを差し込んだ。
『寝ようにも……あんなもの聞いたせいで目が冴えてるの』
久々に聞いた明美と志保の声は、何度も頭の中を巡る。体は疲労を訴えてくるのに、思考がそれを許さない。
考えを引っ張られないように、マウスを動かし続ける。そして、次に開かれたものに手の動きが止まった。
『……これって』
スクロールをして見えた数文でわかった。これは組織の……更に下へいこうとすると右手からマウスが奪い取られ、あっという間にそのタブは閉じられた。
「……消せ」
『えっ』
「てめぇが見る必要はねえよ」
ジンはパソコンの画面を睨む。たぶん、私が消すまでこの状態だろう。
『わかった……』
数回マウスをクリックして、そのデータは完全に消えた。それを確認してジンは離れていきソファーに座り込む。
きっと私が知らない何かがまだあるんだ。いずれ知ることに……なるとも限らないか。
「……例のビルの設計図か館内図があったら言え」
『ん……あ』
タイミングよく出てきたそれを印刷する。その次に開いたものは、オープンパーティーの日程。これも同じく印刷してジンに渡した。
オープンパーティー開催前夜。例のビルに送り込んだ工作員から任務完了のしらせ。爆弾はビルの至る所に設置されているはずだ。
1つ目の目的は、原が組織の情報を転送したかもしれないあのビルのコンピューターを破壊するため。
もう1つは、確実にシェリーを始末するため。
もし、あれらを掻い潜って生還するとしたら……もしかしたら、彼女を始末することはこの先もできないんじゃないか……?