第57章 天国へのカウントダウン
ウォッカがパソコンを手に戻ってくる。それと電話を繋いで、ディスクをパソコンに入れる。
時計をちらりと見ると、あと数分で日付が変わる時間。
準備を整えたウォッカもソファーに座ったけど、私はそんな気になれなくて床に散らばった物を片付け続けた。
電話がかかってこないことを心の中で何度も願ったけど、無情にもそれは届かなかったらしい……響いた着信音に肩を落とした。
「はい、宮野です……」
留守電に切り替わり、懐かしい明美の声が流れる。そして……
「お姉ちゃん?私……」
驚いたような反応のウォッカと、思った通りだというように口角を上げたジン。私はどうにか感情を表に出さないように、拳をぎゅっと握って奥歯を強く噛んだ。
パソコンに表示された空白は順調に数字で埋められていく。
「明後日……ツインタワービルのオープンパーティーに行ってくるわ……」
『えっ……』
思わず声を漏らしたその時。パソコンから鳴り響くエラー音と探知不可の文字。
「チッ……」
「クソっ!」
ジンとウォッカがそんな反応を見せる中、私はそっと詰めていた息を吐いた。でも、彼女が危険であることに変わりはない。
すると、再び電話が鳴って明美の声が……と、先程はなかった電子音。
「メッセージを消しやがった!まさかあの女、オレたちのこと勘づいて?」
「いや、それはない……」
メッセージを消したのは後でそれを聞かれたくないため……確かにそうだと思う。でも、今の言い方……シェリーの行動は目に見えてるとでも言いたげな感じが引っかかった。
「ツインタワービルのオープンパーティー……」
「やっと拝めそうだぜ、シェリー……青く凍りついたお前の死に顔をな……!」
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このままでは本当に彼女は消されてしまう……でも、今どこにいるのかもわからないのに、この状況をどう伝えろというのか。つくづく自分の無力さを憎く思う。
ジンがシャワーを浴びる音がするのを確認して、ポケットから写真を取り出した。
本を拾って片付けながら2人の隙を見て、明美の部屋の写真立てから抜き取ってきたもの。以前、志保がいたラボにあったものと同じ、明美と志保のツーショットの写真。
それも、クローゼットの奥にしまう……そろそろ鍵付きの箱を準備するべきだろうか。見られたらまずいものが多すぎる。