第54章 全部私が※
耳を堪能した後、首筋へと唇を触れながら降りていく。
色の白い肌。キスマークをうまく残せたらきっと綺麗に映えるだろう。
『跡つけていい?』
「……首はやめろ」
『ジンの服だったら見えないよ?』
「首はやめろ」
『……わかったよ』
首は駄目か……それならどこにつけよう。そんなことを考えながら舌を這わせた。まあ、キスマークつけるの上手くないんだけど。
『……駄目だってば』
私の腰に回されかけた手を軽く叩く。
「左手じゃねえか」
『それでも今日は駄目。全部私がやるの』
ジンの左手の指に自分の右手を絡める。
『これなら何もできないでしょ?』
指に力を込めながら笑うとジンは舌打ちをした。
気を取り直してジンの首の中央を、下から上へ舌全体を使って舐め上げる。絡めている指に僅かな反応があった気がして、それを何度か繰り返した。
自分の左手をジンの鎖骨に這わせる。何度か往復させて、そのまま胸の方へ滑らせた。首から口を離して、胸元へ寄せる。
『……ここならいい?』
「……」
何も言わないってことは多分OK……そっと唇を当てて、チュッと吸い上げる。が、その場所は薄らと赤くなっただけ。これじゃキスマークには程遠い。
「下手くそ」
『……あんまりやらせてくれないから』
「あ?やる余裕がねえの間違いだろ?」
『……』
その通り……私が上になることなんて滅多にないし、いつも激しく抱かれるせいで、そんな余裕欠片もない。でも、理由はそれだけじゃなくて、ただジンの鎖骨に皮膚が薄いせいもあると思う。要は吸い付きにくいのだ。筋肉のせいで硬いし。
その後も何度かやってみたけど、綺麗につけることはできなかった。
『……ねえ、脱がすよ』
ズボンのベルトに手をかけて外す。いつもは入れられる直前にする音。そのせいか身体の奥が疼く。
『腰上げて』
ズボンのファスナーを下ろして言うが、ジンは動こうとしない。
『汚れちゃうよ。ほら……』
「……このままでもできるだろ」
……意地でも上げない気だな。たしかにできなくはないけど、このままじゃ確実に汚すし。
『私が……先に脱げばいい?』
そうは言っても、今私が身につけているのはパンツだけ。ここまでくれば半分ヤケだから、わざと見せつけるようにして最後の1枚を脱ぎ捨てる。
「……他の野郎の時もそうしてんのか」