第51章 ひとつの可能性
『こんにちは。空いてますか?』
「あ!えーっと、亜夜さん!どうぞ!」
梓さんがニコッと笑ってカウンター席を手で示した。
「また来てくれたんですね、嬉しいです。何にしますか?」
『アイスコーヒーで。ここの味気に入っちゃって』
「ホントですか!用意しますね!」
チラッと外を見るけど目当ての人物の姿はない。自分の前にグラスが置かれた音がして顔を正面に向ける。と、アイスコーヒーと可愛らしいケーキ。
『あの、これは……?』
「あ、試作で作ってみたんです。よかったら食べてみてください」
『ありがとう。それじゃあいただきます』
置かれたケーキを見て小さくお腹が鳴る。この時間までほとんど何も食べてなかったことに今更気づいた。これは……ケーキだけじゃ足りないな。
『あの、メニュー見せてもらえますか?お腹空いてきちゃって』
そう言うと、梓さんは嬉しそうにメニューを差し出してくれる。前に来た時も思ったけど、喫茶店の割に品数が多い。迷うな……。
『おすすめってなんですか?』
「うーん、カラスミパスタですかね」
『じゃあそれで』
「はーい。少々お待ちくださいね……あ、ケーキ後にしますか?」
『大丈夫です。食べながら待ってます』
ケーキを一口、口に運ぶ。甘さが全身に行き渡るような感じ。美味しい……。
ケーキを堪能していると入口のベルが鳴って、なんとなく視線を向けた。
『あら、コナン君』
「こんばんは、亜夜さん」
こんばんはって……もうそんな時間?コナン君はニコッと笑って私の隣に座る。そしてオムライスとアイスコーヒーを頼んだ。
『今日は一人?』
「うん。蘭姉ちゃんは園子姉ちゃんの家に泊まりで、小五郎のおじさんは飲み会。だからここで夜ご飯」
残念ながらここに来た目的の一つは叶わないらしい。また次の機会を待つか……。
『それじゃあ夜は一人でお留守番?』
「ううん、ご飯食べたら博士のところに泊まりに行くんだ」
『博士?』
「うん。ちょっと変わった発明家で……前から仲いいんだ」
『そう。一人じゃなくてよかったけど……』
改めて外を見ればかなり暗い。この時間に子どもを一人で歩かせるのは少々気が引ける。
『送っていこうか?歩きだけど』
「え、でも……」
『この時間に子ども一人は危ないと思うよ?』