第49章 衝撃の事実
『帰るところじゃないの?』
「呼び出しがあったので」
『それじゃ私はついでってことね』
そう言いながらも、助手席のドアを開けてバーボンの車に乗り込んだ。
『にしてもよく私だってわかったわね。素顔じゃないのに』
「わかりますよ。背格好や歩き方は普段と変わってないですから」
『なんか……その言い方、ちょっと気持ち悪いわ』
「傷つくなぁ……」
傷ついているようには思えない声色と表情を横から眺める。時間的にも薄暗いし、はっきりと見えるわけじゃないんだけど。にしても……
『徹夜?』
「え?」
『クマできてる。寝てないの?』
「……まあ。調べ始めたら止まらなくなってしまって。いつものことなんですけど」
『無理しないでよ……運転大丈夫?代わろうか?』
「あいにくですが女性に運転させる趣味はありません」
なんて言ったくせに路肩に車を止めた。
『どうしたの……んっ……!』
頭を引き寄せられて、唇が重ねられる。啄むようなキスはだんだん深くなっていって、口を少し開くと舌が差し込まれた。クチュクチュと唾液が絡む音が車内に響く。唇が離される頃には息が上がっていて、顔も熱い気がした。
「元気出ました。ありがとうございます。できることならこのまま攫ってしまいたいんですけど」
『……馬鹿なこと言わないで』
窓の外に視線を向けながら、顔をパタパタと扇いだ。
駐車場に着くと、1番端の出口に近いところにバーボンの車が止まる。ジンの車はないくてちょっとホッとした。バーボンと一緒にアジト内に入り、話しながら歩いていればすぐに分かれ道に。
『それじゃ私はここで』
「ええ。会えて嬉しかったです」
『……誰が聞いてるかわからないんだから、そういうこと言わないの』
「まだ諦めたわけじゃないですから」
『もう……大変なの私なんだからね』
「そうですか、すみません。でも……」
バーボンはニコッと笑って私の耳元に口を寄せる。
「今度は貴女からしてくれるのを期待しています……もちろんキス以上も大歓迎ですよ」
私の返事を待たずにそれでは、と言ってバーボンは背を向けて行ってしまった。周囲に人の気配はない。誰も聞いてないよね……?
工藤新一のこと調べ直さないと、と頭を振って意識を切り替え、自室のドアを開ける。すると、馴染みのあるタバコの匂い……が背後からした。