第47章 価値

「どういうことだ」

急に電話口の声がジンのものに変わる。

『だからそのままの意味。人がたくさんいるからあまり話せない』

「チッ……」

『……今日の取引相手と使ってた場所は、どうにかしたほうがいいかもね』

「……そうだな」

『取引相手の写真あるなら送って』

「あったらな」

それだけ聞こえて電話が切れた。

あまり長居はしたくなかったんだけど仕方ない。どちらにしても犯人がわからなければ帰ることはできないだろうし……。

『あ……』

取引相手ってもしかして……と思ったところでウォッカから写真が送られてきた。

『……ビンゴ』

さっきテキーラとぶつかった男だ。

でも、どうして……その男に殺されたのか？こんなに目立つ場所で？

いろいろと考えながら歩いていると、いつの間にかクロークの前。

「あれ、亜夜さん？あの！亜夜さんですよね？！」

その声に振り返った。

「やっぱり！私のこと覚えてますか？」

『……もちろん。元気そうね、蘭ちゃん』

まさか再開するのがこんな場所だなんて……何にせよ変装してきてよかった。蘭ちゃんの隣にはさっきの男の子が。

「こんなところで会えるなんて！あ、亜夜さんってゲーム好きなんですか？」

『あー……知り合いを見かけたから追いかけて来たんだけど、人違いだったみたい。もう帰るつもりだったんだけど……』

知り合いを追いかけて来たのは嘘じゃない。まあ、死んでしまったようだけど。

『ところでその子って蘭ちゃんの弟？』

「違いますよ！ちょっと預かってるんです」

『へえ……』

「あ、さっきはありがとう！」

「え、コナン君、また何かしたの？」

「お金落拾ってくれたんだ！」

『コナンっていうの？珍しい名前ね』

「ボクのお父さんがコナン・ドイルのファンで……」

『そう……』

……なんか、蘭ちゃんって明美に似てる気がする。

『……あ』

掠れ気味の声が出た。思い出した。コナン君に見覚えがある理由。

あの新聞の写真に写ってたんだ……明美が死んだことを報じたあの新聞の……ということは、この2人は明美の最期を知ってるのか……？

ぐるぐると思考が混ざっていく。どうにか忘れようとしていた感情がまた湧き上がってくる。

聞きたいし、知りたい……明美の最期を。