第47章 価値
「あ、オレや……テキーラや」
こいつ……何を堂々とコードネームを名乗ってるんだ……?その前に周囲に人がいないかどうかくらい確認しろ……しかも、ウォッカとジンの名前まで出してるし。話を聞く限りじゃ今日の取引はこれで終わりらしい。まだなんの収穫もないんだけど。
と、自動販売機の前の子供が財布を落として小銭が散らばった。ちょっと悩んで、一緒に拾うことにした。
『……大丈夫?』
男の子に声をかけたけど反応がない。なぜかテキーラの方をずっと見てる。そして、
『えっ、あ……』
そして何を思ったか、テキーラの足を持ち上げようとする。
「この足どけてよーボクの10円玉が取れないよー!」
「しばかれんぞクソガキ!!」
止める間もなくテキーラはその子を蹴り飛ばした。別に知り合いでもないし気にする必要ないんだけど、相手がテキーラだと思うといちいち気に触る。
テキーラはそのままトイレの方へ立ち去っていく。
『大丈夫?』
男の子にまた声をかけるとやっと振り返った。
「え……っと」
『お金落としたでしょ?それにほっぺ腫れてるし……』
なんか、すごい見られてる。やっぱりどこかで会ったことあるのかな……?
「あ、ありがと!じゃあね!」
お金だけ受け取って慌てたように走っていった。もうちょっとで思い出せそうなのに……。
『あ、見失っちゃまずいな』
立ち上がってテキーラが向かった方へ歩いていく。きっとトイレの中で受け取った物の確認をしているはず……
ドォン!!
『は……?』
ものすごい音と煙が一気に押し寄せてきて、顔を背ける。少しして、煙がおさまってきてから顔を上げたけど、状況が全く読めない。
テキーラは死んだ?でもどうして?取引相手が仕掛けたのか?
数分後、警察が到着した。野次馬は増えるから、ここに居続けて得られる情報は得ていかないと。
「死んじゃった人なら見たよ!」
さっきの男の子が警察と話してる。
「2mを越す大きなおじさんだよ!たぶん関西の人なんじゃないかなー……」
これは決まりだな……人目につかないようにその場から離れて、電話をかける。
「マティーニですかい?どうしやしたか?」
『テキーラが死んだ。何か知ってる?』
「………………は?」
『詳しいことはわからない。わかり次第また連絡するけど』
「えっ、あ……えっ?」