第47章 価値
「えっと……」
なんでも前世界の有能なプログラマーのリストを取引相手から買うらしい。それも結構な金額で。
流石ウォッカ。他人の任務の内容をちゃんと把握してる辺り、本当にできる人なんだなぁって思う。そうじゃなきゃジンも近くに置きたがらないだろうし。
『これどこに持ってくんだっけ?先行くから』
「あ、ここまでで大丈夫です。あとは俺が」
『そう?ごめんね、最後までできなくて』
「いえ、助かりやした。それでは」
あいさつもそこそこにウォッカと別れて、自分の部屋に戻る。そして、普段の半分以下の時間でプライベート用の変装をした。か簡単に
見つかるような尾行の仕方をするつもりはないけど念の為。テキーラはこの顔を知らないはずだし……見たことがあったとしても覚えてないはず。
自分の車じゃ目立つし、アジトを出てすぐにタクシーを拾った。
『……見つけた』
前を行くテキーラの姿を見つけて、一定の距離を保ちながら後をつける。そして、ヤツが入って行ったのは
『米花ホテル……新作発表会?』
有名なゲーム会社の名前とともにそう書かれた看板を見て呟いた。建物の中を覗けば、結構な多人数。これだけ人がいればうまく紛れやすいかな。
良いのか悪いのか、テキーラは周りの人達より頭2つくらい大きいから簡単に見失うことはない。
テキーラがフロントに鞄を預けた。そして、トイレの方へ向かっていく。
『……さすがにまずいよね』
いくらなんでもこの格好で男子トイレに入る勇気はない。外で待つか……なんて思ったのにくるっと向きを変えてこちらに向かってきた。
『チッ……』
顔を見られてもいいと思ってたのに、長年の経験のせいかとっさに身を隠してしまった。陰からこっそり様子を伺う。
すると、大人の男と小さい男の子が一緒に歩いてきた。その子供の方に見覚えがあった。
『あの子、どっかで……』
どこだっけ、思い出せない……。モヤモヤしたまま伺い続けていると、テキーラと大人の方がぶつかった。明らかにお互いが見えていただろうに……だとするなら、あの男が取引相手か……?
テキーラはそのままフロントへ行って鞄を受け取った。そして、公衆電話の方へ……。
するとさっきの男の子も来た。何をするかと思えばその子は自動販売機の前へ。
それに気づいてるのか気づいていないのか、テキーラは電話をかけ始めた。