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【名探偵コナン】黒の天使

第43章 純粋な優しさ


亜夜side―

差し出されたホットミルクのカップを受け取る。口をつければ、牛乳の柔らかな香りの中にほんのり蜂蜜の甘さを感じる。ガッツリ甘くしない辺り、よく好みをわかってる。

『……ごめん』

「……それは何に対してですか」

『今日会ってからここまでのこと、全部かな』

そう言ってまた、ちびちびとミルクを飲む。

「頼られるのは迷惑ではないですよ」

『それ、いつも言うよね』

「本心ですから」

まだ濡れている私の髪をそっと撫でながらバーボンが言った。この雰囲気とか優しさに毎回甘える自分もどうかと思うけど、同じく毎回受け入れてくれるバーボンもどうかしてる。

間違っても恋人じゃない。でも、友達でもない。セフレほど安直な関係でもない。同じ組織の人間っていうのも間違ってないけど、バーボンは他の人と同じ場所にはいない。

信用しすぎるのも問題。でも、バーボンがいなかったら精神的なダメージでどうにかなったかもしれないことも何回かある。

『……優しいね』

「もちろん下心だってあります」

『それをわざわざ言うあたりも』

「もう何度も伝えてますから。今更隠すことでもないでしょう」

バーボンはまだ半分くらい残っている私のカップをそっと手から抜き、テーブルの上に置いた。

「……キスしてもいいですか?」

頬に手をそえられて、至近距離で見つめられながら言われる。

『好きにすれば』

「……嬉しいです」

唇を親指がなぞっていって、ただ触れるだけのキスをされた。それだけ、一瞬触れただけで離れていく。もっとされるものだと思ったから、拍子抜けしてしまう。

「足りないですか?」

『……別に』

……表情に出てたかも。顔を逸らしたくても頬に当てられている手によって阻まれる。

「それじゃあ、もっとしてもいいですか?」

『なんでいちいち聞くのよ……』

返事はなくて、ただふんわりとした笑みを浮かべながらこちらの答えを待っているようだ。

『……いいけど』

「なら、遠慮なく」

また唇が重なって、今度はいきなり舌が入り込んでくる。そしてそのまま舌を絡められて深いキスをする。

静かな部屋にキスする音だけが妙に大きく響く。バーボンの手は、私の頭を撫でたり、背中をなぞったり……元々そのつもりだったし、先に進んでいいのに……服の中に手が入り込んでくる気配はない。
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