第43章 純粋な優しさ
……そのつもりだったからブラ付けてないのに。
何度も背中をなぞってるから、バーボンだって絶対に気づいてる。それなのに触れてくれるのは頭と背中と、時々耳。キスはどんどん深くなっていって頭もぼーっとしてくる。
『ねえ……』
「んっ……なんですか?」
『……キス以上はしないつもり?』
「したいに決まってるでしょう」
『じゃあなんで……』
「約束したじゃないですか。忘れたんですか?」
『えっと……』
「キス以外のことを僕からはしないって、そう言ったでしょう?」
あの時か。バーボンのネクタイを買って、口紅をもらった時。思い返せば確かにそんな話をした気がする。
「約束は守りますよ」
『律儀ね……』
「まあ、この先僕が薬を盛られるようなことがあって、理性が飛んだりしたら保証はできませんけど」
『……そんな未来、来るとは思えないわ』
「同感です」
また軽くキスが落とされる。手の動きも止まっていて、でも、スイッチだけ入ってしまった体は刺激を求めている。
『……抱きたいんでしょ」
「僕だけがそう思ってるみたいな言い方しないでください」
『そんなつもりないけど……』
「嘘ですよ。今すぐにでもベッドに押し倒したいです。でも、貴女の許可がないなら何もできません。僕としては許可よりお強請りの方が嬉しいですけど」
『……時々すごくタチが悪いわね』
「なんとでも」
お尻から腰にかけてゆっくりとバーボンの手が這う。何度も同じところを行ったり来たり。
「……どうしますか?」
『……』
一瞬、頭の中にジンの顔がチラついた。全く同じ、とは言わないけど、似た様な感情をお互いに向けあっているようだし、この状況に少しだけ迷ってしまう。
「その気がないなら寝ましょうか」
『あっ、えっと……』
セックスはしたい。でも、ジンに対してどうしようもないくらいの罪悪感が芽生える。ジンと一緒にいられなくなるのは嫌。だけど、今は一緒にいたくない。矛盾だらけでどうしていいのかわからない。
「……今回だけですよ」
『え……?』
「僕からすれば、貴女の気持ちも楽でしょう?それに、据え膳食わぬは男の恥、とも言いますし」
ズボンのゴムに沿ってバーボンの指が行き来する。そして人差し指が少し入り込んできた。
「好きにしていいんですよね?」
その言葉に、また小さく頷いた。