第41章 嫌な匂い
『……末端に任せられるような仕事じゃないと思うんだけど』
「かもな」
『何それ……失敗してもいいってこと?』
「……」
『たった3人送り込んたって無理に決まってる。誰か援護に……』
「お前が決めることじゃねえ」
『……10億なんて取引相手を揺すれば集められるでしょ。だいたい、そんな大金何に使うの』
「お前が知る必要あるか?」
何も教えてくれないのはいつものこと。ただ、それに比べても素っ気ないというか、よそよそしいというか……。
『ねえ、私何かした?』
「……何もねえよ」
『ちゃんと目見て言って』
「しつこいな……」
伸ばしかけた私の手を払い除け、ジンは1人でベッドに寝転んだ。しかも、私に背を向けて。
『意味わかんない……』
気分をすっきりさせたくて、バスルームへ向かった。
シャワーを浴び終えて部屋に戻る。明日の予定とかメールなんかを確認しようと思ってスマホを手に取った。
『あれ……充電切れ?』
画面は真っ暗なまま。電源ボタンを押しても起動しない。半分くらい残ってた気がしたんだけどな……なんて思いながら充電をしたけど、それでも何も言わない。
『嘘……まだ変えてそんなに経ってないんだけど』
寿命にしては早すぎる。故障かとも思ったけど、強い衝撃だったり水に落としたり……なんて記憶はない。
小さくため息を着いてジンの背中に声をかけた。
『スマホ、なんかおかしいからラボまで行ってくる』
「……」
寝てるのか、ただ無視されたのかはわからないけど何も言われなかった。
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『どれくらいで直せる?』
「まだなんとも……原因がわからないので」
ラボに来て研究員の1人にスマホを見せたけど首を傾げられた。
「代わりの物をお貸しします。1週間で直るとは思いますが……」
『……わかった。1週間後に取りに来る。どうしても駄目なら連絡して』
「わかりました」
ラボから出て歩きながらため息をつく。今日1日でテンションの上がり下がりが激しい。
トロピカルランドはそれなりに楽しかったし、あの2人に会えたのも悪くはなかった。でも、その後の取引は若干の罪悪感を覚えた。
明美と志保と会えたのは嬉しかったけど、2人とも様子がおかしかったし。
『……何もないといいけど』
胸騒ぎがする。恐ろしいことが起きるんじゃないかって。