第40章 トロピカルランドにて
チケットの半券があれば再入園できるらしいけど、顔が違うからまた新しく買った。ちょっと変な目で見られたけど、仕方ないだろう。
今の私の格好はジン達のことをとやかく言えるようなものじゃない。黒のライダースーツに黒いバッグ。一応帽子とサングラス。普通に怪しい。
事件は解決したのか、青いワンピースの女の人が警察と一緒に歩いて行った。
それからしばらくしてジンとウォッカの姿が見えて、駆け寄ろうとしたけど、そのすぐ後に工藤新一と蘭ちゃんが出てきて身を隠した。この姿で会うのはまずいなぁ……と思って、ジンにメールをすることにした。
メールを送った直後、電話がかかってくる。
「……来るなって言ったろ」
『いいじゃない。それより合流したいんだけど』
「何のつもりだ」
『だって事件現場にいたでしょ?あの高校生探偵に目付けられてたりして』
「……どこにいる」
『すぐ近く。でも、ちょっと出て行けない』
「……チッ」
こちらの視線に気づいたのか、ウォッカに何か言って1人で向かってくる。ウォッカは足早に反対方向へ向かって行った。
「……で、何の用だ」
『警察もまだうろついてるし、危ないんじゃないかなって思って』
「わざわざその中に飛び込んでくるお前に言われたくねえな」
『……だってこの後取引でしょ?周囲を警戒する人間が多い分にはいいじゃない』
「帰れ」
『やだ……はい、これ持ってて』
そう言って警棒を差し出した。伸縮するやつね。
「必要ねえ」
『いいから持ってて』
頑なに受け取ろうとしないとジンのコートのポケットにそれを無理矢理突っ込んだ。
『SNSに写真が上がってるの。2人の姿も写ってる』
「……」
『疑われたりしなかった?』
「さあな」
『まあ、その見た目じゃ無理ないと思うけどね』
「いちいちうるせえな」
『あ、だめ、ここ禁煙』
日も暮れ初めてきて、微かに西の空が明るい。
「……行くぞ」
『え、いいの?』
「そう言うなら帰れ」
『冗談よ、一緒に行く』
ちょっと歩いて着いたのは観覧車の下辺り。建物と周囲の木々のおかげで人々の目からはわかりにくい場所。私とジンは隠れて取引の様子を伺う。取引相手の前にウォッカが立つ。
『……あ』
「チッ……」
その後ろを追うように探偵……工藤新一も姿を現した。