第40章 トロピカルランドにて
偽名でもよかったんだけど、また会えるような気がしてつい本当の名前を伝えた。
2人から離れ歩き始めた。それでも、なんとなく振り返るとまた2人と目があって軽く笑みを向けた。
2人はジェットコースターの方へ向かっていく。またぐるりと園内を見回すと……馴染みのある、黒ずくめの男が2人。そして、なんと……ジェットコースターの列に並び始めた。
『ジンとウォッカがジェットコースター……?』
絵面が面白過ぎる。あとでからかってみよう。ニヤけそうになる口元を抑えてお土産売り場へ。志保と明美に何か買っていこう。
途中、こんな場所には不釣り合いなアタッシュケースを抱え、周囲を見回しながらオドオドしている男とすれ違った。
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園内から出て自分の車へ。さて、帰るか……なんて思っていたら、キャンティから一通のメール。何かと思えば、キスマークの絵文字が3つ。そして添付された写真に写っていたのは……観覧車のゴンドラに乗っているのか、嬉しそうに外を眺めるコルンの写真だった。
『ふふっ』
キャンティってなんだかんだ優しいよな……なんて思っていると本人から電話。
「マティーニ?写真見たかい?」
『見たよ。観覧車?』
「そう、コルンが乗りたがったもんだからさ。わざわざ準備したってのに出番なしで退屈だったし」
『そっか、お疲れ様』
「そんなこと言ってくれんのアンタくらいだよ!」
すると、サイレンの音がどんどん近づいてきて、パトカーが何台もトロピカルランドの駐車場へ入っていく。
『キャンティ、観覧車から降りたらすぐそこ出た方がいいかも』
「ん?なんでだい?」
『ちょっと用があって近くに来てるんだけど……パトカーがたくさん……』
「ホントかい?……チッ。近くにいるなら拾おうか?」
『ううん、大丈夫。一応ジンにも伝えておきたいし』
「……そうかい。アンタも気をつけな」
『うん、ありがと。じゃあ、またね』
電話を切って考える。ふと、思い立ってSNSを開けば、事故なのか事件なのか……よりによってその現場はあのジェットコースターで。
状況から見て、あの工藤新一が関わるのはほぼ間違いないし、ジン達が列に並んだタイミングを考えれば、たぶん事件現場にいる……いや、絶対いる。不謹慎なヤツが撮ってアップされた写真にバッチリ写ってる。
『……行くか』
そう呟いて変装を解いた。