第40章 トロピカルランドにて
「……何笑ってる」
『ジンとウォッカがいつもの格好で、しかも、2人で歩いてたらって考えたら……ふふっ』
「いちいち変装する理由がねえよ」
『まあ、さすがにガラの悪さで通報する人はいないと思うけど』
「……」
『何かあったら合流するね』
「……勝手にしろ」
『そうする。あ、もう一個聞きたかったんだけど泥参会って……』
「誰に聞いた」
『ウォッカだけど……あんまり詳しく知らないから』
「必要になったら話してやる」
ジンはそう言ってまた新しいタバコに火をつけた。
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翌日はよく晴れて絶好の遊園地日和。
『何かあったら連絡するね。そっちも困ったら連絡してきていいから』
「いろいろ言ってねえでさっさと行け」
『はーい、またね』
駐車場に降りてハッとした。この格好にこの車か……まあ電車も嫌だし、歩いて行ける距離じゃないし仕方ないか。
なんとなく駐車場内を見回せば、キャンティのバイパーは既になかった。ベルモットのバイク、1回くらいエンジンかけてあげた方がいいかな……今度連絡入れておこう。
トロピカルランドの近場の駐車場を調べる。ちょっと遠くても何かあった時のために……嫌な予感がとんでもないものを呼ばなければいいんだけど。
『……賑やかだな』
トロピカルランドの駐車場から少し離れた、また別の駐車場に車を止めた。距離はあるけど、そこからでもその周辺の空気が楽しそうだとわかる。近くの駅から歩いてきたであろう人達の足取りもウキウキ、ワクワクしてるのがよくわかる。鏡で身だしなみを今一度確認して車を降りた。
チケットを無事購入。園内に踏み込めば一気にその場の雰囲気に包まれる。
ここのマスコットキャラクターの着ぐるみが子供達と写真を撮っていたり、噴水が吹き上がる様子、風船がふわふわと宙を漂うのも何もかもが新鮮。
アトラクションに乗る気はない。見て回って満足したら、お菓子か何か買って帰るつもりだ。
キョロキョロしながら歩いて行く。チケット売り場で貰ったパンフレットと景色を何度も見比べながら歩いていた。だから景色しか見えてなくて、目の前から歩いてきた人に気づかなかった。
「あっ、おい」
「えっ?わぁっ!」
『うわっ……あ、ごめんなさい』
ぶつかった拍子に相手の持っていた飲み物が地面に落ちた。
「すみません!よそ見してて……」