第40章 トロピカルランドにて
『ねえ、連れてってよ』
「断る」
『ねえ、トロピカルランド……じゃなくて任務行きたい』
「本音が漏れてる。それよりなんで場所を知ってる」
『ウォッカが教えてくれた』
「てめぇ……」
「すっ、すいやせん、てっきり話してあるのかと……」
『いいじゃん、1人増えたって変わらないでしょ』
「変わる」
『キャンティとコルンも連れてくくせに?』
「あいつら……」
『あ、本当に連れてくんだ』
「……てめぇカマかけやがったな」
明日の任務。なんでも、この間のバーで受け取った拳銃密輸のデータを使って、ある会社の土地を奪うらしい。別にそれ自体に興味はないし、ジンとウォッカがいるなら失敗することはない。
ただ、単純にトロピカルランドに行ってみたい。
『遊園地なんて行ったことないの』
「行く必要ねえだろ」
『行きたいの!ねえ、ウォッカ何とか言ってよ』
「すいやせん、俺は……」
「ほら見ろ、てめぇが来る必要はねえ」
『っもう!ケチ!じゃあ1人で行くからいいもん!』
「1人で……遊園地……」
『ウォッカ?何か問題ある?』
「いえ、別に」
そうと決まれば服決めないと。遊園地に行く場合の知識なんて欠片もないからスマホで調べて……なんか、友達とお揃い!とかカップルコーデ!とか……ちょっと虚しい。
でも、行きたいし!友達にドタキャンされたってことで!
『でも、バーボンなら来てくれるかな……』
「ふざけんな、1人で行け」
『……わかってるよ』
パンツスタイルの方が動きやすいかな……アトラクションに乗りたいわけじゃないし、そうなると園内を歩き回るだけだろうし。
顔も一応変えていこう。いつものふわふわの茶髪の顔ね。
「それじゃ、これで」
そう言ってウォッカは部屋を出ていった。
「……邪魔だけはするなよ」
『しないよ、車も別で行くから』
「別の日にすればいいだろ」
『明日がいいの!』
何かあった時に頼れる人間がいる方が心強いってのもあるけど……何となく嫌な予感というか、何かが起きそうな気がするのだ。この手の勘はよく当たる。
『ジンも変なことに首突っ込んじゃ駄目だよ』
「んなことしねえよ」
『一応聞くけど……その格好で行くの?』
「問題あるか?」
『まあ……』
こんな黒ずくめの男2人が遊園地にいたら……なんか面白いかも。