第4章 下手くそ……※
その時、ジンの手が止まった。
「……俺が怖いか?」
目を合わせて聞かれる。その目はどことなく不安そうな気がした。
『……ジンのことは怖くない。でも……』
与えられ続ける快楽に溺れていく自分が怖い。
『自分が……自分でなくなりそうで』
そう言うと、ジンの顔が近づいてきてキスされる……触れるだけの優しいキス。
「お前が変わることはねえよ」
私を頬に手を添えて……笑った。それは今まで見たことがないくらい、優しい顔で。
「嫌ならここで辞めるが……どうしたい?」
普段なら有無を言わさず決める癖に、なんで、今日はこんなに優しいんだろう……。
添えられた手に自分の手を重ねて、ジンの目を見て答える。
『……辞めない』
「本当にいいんだな?」
小さく頷くとまたそっとキスされる。
「服、脱げるか?」
これ以上汚したくねえだろ?とニヤッと笑う姿はいつも通り。
『あっち向いてて……』
「今更何を……」
『向いてて!』
確かに既に胸は見られた後だけど、それとはまた別の恥ずかしさがある。
舌打ちしながらも目線を逸らしてくれたジンを見て、自分の服に手をかける。下着、もっと可愛いのつけてくれば良かったな……なんて考える。パンツぐしょぐしょ……帰りどうしよう。
「……遅せぇ」
そう言ってジンはこちらを向く。いつの間にかジンも上の服だけ脱いでいた。咄嗟に自分の身体を隠そうとするけど、それを阻まれてベッドに押し倒され、上に跨がられる。
「悪くねえな……」
その言葉にちょっと嬉しくなった。
そして、初めて見るジンの身体。着膨れするタイプなのだろうか、普段の姿より線が細く見える。でも、ひ弱そうな感じではなくちゃんと男の人の身体。要するに無駄がない。
「自分は嫌がるくせに、人のはよく見るんだな?」
ふと我に返り、慌てて目を逸らす。
首元に吐息を感じ、舐められる。身体を撫でる手も優しくて。
『んっ……はぁ……』
それだけなのに気持ちいい。
「どうして欲しい……?」
耳元で囁かれる。その声も耳にかかる息も、全てが心地いい。
『……優しくして』
「フッ……存分に甘やかしてやるよ」
そう言ってされるキスは舌の絡む深いやつ。でも、さっきとは違って凄く優しい。
その時、心の奥から湧き上がってきた感情を何と呼ぶのか……私はまだ知らなかった。