第36章 諦めませんから
「束縛したい、貴方に首ったけ……そんなような意味が込められるんですよ」
『……』
「まあ、今回は僕が選んで欲しいと頼んだので……束縛されたいの方が正しいかもしれないですけど」
『だからあんなこと言われたんだ……』
「何を言われたんですか?」
『それは秘密……ネクタイピンにも意味あったりする?』
「確か……貴方を支えたい、だった気がします。もしかして選んでくれたんです……」
『い、言っておくけど、必要かなって思っただけだから!何も知らなかったからね!』
「……そんなに否定されるとショックです」
『うっ……ごめん』
「冗談です」
『このっ……!あ、ちょっと』
私の手からあっという間に袋が取られ、空になった手はまたバーボンの左手が繋ぐ。
「行きましょうか。他に何か見ますか?」
『別に』
「それじゃもう一箇所見に行っても?」
『いいけど……さっき出ていった所とは別なの?』
「同じです。でも、僕の知識と経験だけじゃ決められなくて」
一体何を買うつもりなんだろう……まあ、何にしても借りは残ってると思うしそれも私が買おう。そして着いた先は……まさかのメイク用品店。
『……え?』
「口紅、選んでくれませんか?」
『誰用?』
「貴女以外にあげるつもりはありません」
『……何か意味があったりする?』
「選んでくれたら教えてあげます」
そんなことなら自分で調べよう。そう思ってスマホを開こうとしたけど、画面に表示された不在着信の数に背筋が冷える。そのまま開かずにそっと元の場所へしまった。
……さっさと決めよう。
口紅は結構な数持ってる。普段使いのものはある程度決まっているけど、変装とかパーティに行く時もあるのでたくさんの種類があっても問題はない。でも、今回はいつも使ってる色が減り気味だからそれと同じ色にすることにした。
『……これにする』
「じゃあ買ってきます」
『私が……』
「付き合ってくれたお礼ですから」
『待ってよ、選んだら意味教えてくれるんでしょ』
「……買うまで待ってください」
するっと繋いでいた手がほどかれて、バーボンはレジの方へ歩いていき、数分で戻ってきた。
『そろそろ帰らないとまずい……』
「そうですか。じゃあ戻りましょう」
『ねえ、まだ教えてくれないの?』
「……ここで叫ぶつもりですか?」