• テキストサイズ

【名探偵コナン】黒の天使

第36章 諦めませんから


『……スーツ?』

その先にあったのは紳士服売り場。

「こっちの仕事で着るものが欲しいんです。この間一着駄目にしてしまったので」

『そっか。じゃあ欲しいものはだいたい決まってるか』

「ええ。それなので、貴女にはネクタイを選んで欲しくて」

『いいけど……なんで私?』

「自分で選ぶと似たようなものしか買えないので」

『ああ、わかるかも』

私の私服だってベルモットが選んで送ってくれなければ、似たようなものしかなかったかも。自分にはこれしか似合わないっていう固定観念みたいなのがある。

『いつもの感じのループタイ?嫌な色とかある?』

「いえ、欲しいのは……えっと、探偵業でつける普通のネクタイです……色は赤が入ってなければなんでも」

『わかった』

赤……なんで嫌なんだろ?考えてもわからないし、聞いても答えてくれない気がする。

思考を切りかえて、バーボンが助けてくれた雨の日の彼の格好を思い出す。どんなものがいいだろう。無地?ボーダー?ワンポイント?柄物……のイメージはないなぁ。

ネクタイのコーナーの前で行ったり来たり。ネクタイを選ぶのは初めてだ……ウォッカのネクタイはいつも黒だし、ジンはつけてないし。ハニトラの任務で男装した時は、ベルモットが選んでくれたものをそのまま着ていったし。

「何かお探しですか?」

そう声をかけてきたのは店員の男性。50歳前後に見えるが言動に品がある。

『えっと、仕事仲間にネクタイを……』

「そうでしたか。どのようなものをお探しでしょうか?」

『どんなスーツにも合うような……あ、でも赤が入っていないものがいいんですけど』

「かしこまりました。少々お待ちいただけますか?」

男性は綺麗に並べられたネクタイの箱を迷うことなく選んでいく。そして一つ一つそっと箱を開けていく。

『うーん、どうしよう……』

「ゆっくり御覧になってください。もし、他にも見たいものがあれば遠慮なく仰ってくださいませ」

どれも似合いそうだけど、あまりたくさんは必要ないだろうし。視線を上げてバーボンを探すけど見当たらない。試着でもしてるんだろうか。

「決まりましたか?」

『うわっ……急に後ろから声かけないでよ』

「すみません」

『ねえ、この中で気に入ったのある?』

「貴女が選んでくれるならどれでも」

『それじゃ困るのよ……』
/ 884ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp