第36章 諦めませんから
そっと手を引かれてバーボンの少し後ろを歩き始めた。無理矢理振りほどけばいいのかもしれないけど、それを邪魔する罪悪感があって小さくため息をつく。それに合わせて下を向いた時に、視界が妙にクリアなのと、風に靡いた髪色を見て足を止めた。
『あ……ねえ、サングラス欲しい』
「あれ、今日は持ってないんですね」
『……忘れたのよ。任務以外に出歩くつもりなかったし、必要ないと思ってたんだけど』
「じゃあ先に買いに行きましょう……あー、車の中で待ってますか?」
『ちょっとの間だけだからいい、このまま行く』
サングラスを買うまでは髪で顔を隠すようにすればいい。そう思って若干俯きながら足を進めた。
「……もっと悩みませんか?」
『別にどんなのでも問題ないし。かけられればそれで』
いい感じのお店があったのでそこに入り、まっすぐにサングラスのコーナーへ向かい、1番上にあったものを手に取った。一応試しにかけてみたし、今の格好に合わないわけじゃないからこれでいいや、とレジに進もうとしたのに。
「伊達メガネじゃ駄目なんですか?」
『駄目じゃないけど……』
「髪を結い上げれば、伊達メガネでもだいぶ印象が変わりますよ」
『……じゃあ選んでよ』
「わかりました」
そして数十秒の後差し出された伊達メガネを受け取り、そのまま会計をしようと……
「……かけてみないんですか?」
『貴方がこれを選んだんでしょ。センスは疑ってないしこれでいいよ』
「待ってください、僕が選んだんですから僕が買います」
『駄目よ、使うの私なんだから』
「ですが……」
『はぁ……今日は貴方に……あ、なんでもない』
「そこまで言っておいてですか?」
『いいの!とにかく私が買うから……お店の外で待ってて』
バーボンを店の外へ追いやって今度こそ会計を……髪を結ぶためのヘアゴムなんか持ってないから、レジ横に置いてあったものも一緒に購入。タグを切ってもらうことも忘れずに。
『……お待たせ』
「それも似合いますね……でも、髪を結う位置はもう少し下げた方がいいかと。じゃあ行きましょうか」
そう言った癖に手を繋がれるから結び直せない。というかなんで低い位置?
『ねえ、髪結び直したい。それと何か欲しいものないの?』
「これといって……あ、あの店見てもいいですか?」
バーボンの視線の先には……