第33章 逃がさない※
「……では、今日は帰って来ないんですね?」
『う、んっ……ごめんっ……』
喘ぎそうになるのを堪えながらどうにか返事をするけど、どうしても声が上擦ってしまう。小さく首を振りながらジンを睨むけど、動きは止まるどころかだんだん激しくなっていく。
「……本当に大丈夫ですか?息、荒いですよ」
『だい、じょうぶっ……んっ、切っていい……っ?』
「マティーニ……今、誰と居ますか?」
『んうっ……な、んでっ……?』
「どう聞いても普通の状態ではなさそうですから……誰と何をしてますか?」
きっとバーボンは気づいたのだろう。こういう勘が鋭いところは本当に尊敬できるのに……今はその能力の高さを恨めしく思う。
『おねがいっ、切ってっ……!』
「マティーニ……」
『んんっ、んああっ……!』
「っ……!」
ジンのソレが思いっきり奥を突いて、ついに声が出てしまう。一度抑えが効かなくなれば、再度抑えることなんてできるはずもない。
耳に当てられていたスマホが離れていく。
「……人のものに手出してんじゃねえよ」
ジンは通話口にそう吐き捨て、スマホを床へ投げた。
『最低っ……!』
また涙が浮かんでそれがこぼれ落ちていく。感情がめちゃくちゃだった。どうしようもない快楽、バーボンへの罪悪感……まだ捨てきれないジンへの思い。
「ずっとナカ締めやがって……あの野郎に聞かれて興奮したか?」
『ちがうっ……う、ああっ!』
「気が変わった……話は明日だ。今日は俺が飽きるまで付き合え」
『そんな、むりっ……!』
「無理?知るか」
『ああっ……だめ、イっちゃう……!』
ガクンと腰が跳ねる。既に体力は限界。この先持つわけがない。
「何度イっても、何度意識が飛んでも最後まで付き合え」
『ほんとに、むり……』
「てめぇの都合なんか知らねえ。こっちは2ヶ月待たされてんだよ」
逸らそうとした視線は、顎を掴まれたことによって阻止される。
「俺から離れたこと、後悔するんだな」
何度イったのか、意識が飛んだのか……もうわからない。涙が流れ続けて、口の端からは涎が垂れる。
キスも愛撫もされない……感情なんて何もない、ただの性処理。
最初のうちにあった思いはどこへやら……ただ与えられ続ける快感を受け入れるだけ。
「……逃がさない」
何度目か意識が飛ぶ瞬間にそう聞こえた。