第31章 利用※
微かに聞こえるシャワーの音。本気で抱かないつもり?絶対勃ってたし、余裕もなさそうだったのに?バーボンの考えてることがわからないことは多いけど、今日は特に理解ができない。私自身の欲は収まったけど、ヤリたいなら我慢しなくていいのに。
もう熱もない気がするけど、シャワーを浴びる気にはならなかった。昨日までとは違うモヤモヤを感じながら体を拭いた。そして、乾いた下着と新しく用意されたスウェットを着る。
あ……そろそろメール確認しないとまずくない?でも、ここで電源いれたらまずいかな……それならどこか外で確認したいんだけど……。スマホを目の前に置いて、それを睨みつけながら悩む。
メールだけしかないかな……それとも着信履歴が異常な量あったりする?
忘れたいのに、どこかで期待してる。あの寝言に大した意味なんてなくて、夢の中でそう言わざるを得なかったとか……拷問の夢でも見たんだろうか?
ジンが拷問されるって……返り討ちにして笑ってそうだけどな。
「……どうしたんですか?」
『へっ……?えっ、服!着て!』
「何か悩んでるのかと思って」
後ろから聞こえた声に振り返れば、ニコニコ笑うバーボン。身にまとっているのは腰に巻かれたタオルのみ。あんなこといいながら誘ってんの?にしても相変わらず素敵なボディ……。
「口、開いてますよ」
ハッとして口を押さえ、楽しそうに服を着るバーボンから目を逸らした。なんでこんなに余裕そうなんだ。煩悩を振り払う術でもあるのか。
「……夕方、時間ありますか?」
『なんで』
「買い物に付き合って欲しいんです」
『……いいけど』
じゃあ、そこに出たついでに、どこか適当なホテルでおろしてもらおう。もう体調も問題なさそうだし。それならば、と干してある服を取って畳もうとした。
「そのままでいいですよ」
『よくないよ。置いてったら着替えないもん』
「出ていっちゃうんですか?」
『もうほとんど治ったし。これ以上迷惑かけれない』
「……それなら買い物の必要もないんですけど」
『どういう意味?』
「ここにいてくれていいんですよ」
『だから、迷惑かけたくないの』
「迷惑だったら連れてきてないって言ったでしょう」
『それでも、もう大丈夫だから』
埒が明かない。そう思って彼に背を向けたのに。
「……ここにいて欲しいと言ったら迷惑ですか?」