第31章 利用※
『……え?』
「え?じゃありません。服を脱がないと体、拭けないでしょう」
『いや、そこまでしてくれなくても……』
「風邪引いてる人が何言ってるんですか」
『じ、自分でやるから』
「……そうですか。でも、背中は自分じゃ拭きにくいでしょうから、お手伝いしますよ」
……体を拭くだけだ。それ以外になにかする訳じゃない。って、何を考えてるんだ私は……!
上着の端を持って、ゆっくり持ち上げる。下着はつけてないから、すぐに空気が肌に触れた。背中越しに差し出された濡れタオルを受け取ったはいいものの……。
バーボンの持つタオルが背中に当たって、変な気分になる。拭いてるだけ……何度そう言い聞かせても、自分の体は固まったままで動けない。
「……ほら、早くしないと体冷えますよ」
『う、うん……』
頭をブンブンと振って、湧きかけている変な考えを脳内から追い出して、よし拭くぞ……と思ったのに。
『ひゃっ……』
「可愛い反応しますね」
『なっ、何してるのよ!』
「何って……こうしただけです」
つーっとバーボンの指が背筋をなぞった。なんとも言えないゾクゾク感が体中に走る。
『ね、それ、やめて……』
「背中は拭き終わったので暇なんです。貴女が拭き終わるまでの間だけですから。それに……」
バーボンの手が肩に触れて、吐息を耳元で感じて。
「こんなに綺麗な体、触れるなって方が無理な話です」
『っ……!』
身体の奥がドクンと脈打った。こんな言葉にすら感じているなんて……しばらく抱かれていない身体は熱を持って、快楽を求め始めようとしていた。
耳元にかかるバーボンの息。いつの間にか手はお腹にまわっていて、でもそれを止める気にもなれず。その指は脇腹をなぞってどんどん上へ……
「……悪戯が過ぎましたね。すみません」
胸に触れる寸前だった手は、その言葉と同時に離れていく。
『な、んで……』
「やめて欲しいんでしょう?それに病人に手を出すわけありませんから」
顔だけ後ろに向ければニコニコと笑っているバーボン。睨んでもその顔は変わらない。
ああ、もう……身体の奥が疼いて仕方ない。気持ちよくなりたくて、もうそれしか考えられなくなってる。
『っ、ねぇ……』
「なんですか?」
『えっと、その……』
……昨日、あんな事を言わなきゃよかった。