第31章 利用※
目を覚ました。バーボンの姿が見当たらなくて、体を起こす。
「起きましたか……あ、無理しないでください」
『……いなくなったのかと思った』
『買い物に行ってきただけです……熱、だいぶ引きましたね」
額に手が当てられる。相変わらずひんやりした手だ。
『薬……あるならちょうだい』
「ありますけど……飲むならその前にご飯食べてくださいね」
『……』
「昨日から何も食べてないでしょう?栄養を取らないと、治るものも治りませんよ」
『……うん』
「待っててください。持ってきます」
少しして運ばれてきた食事。お粥……かな。美味しそうな匂いがする。
「卵粥です。これなら食べやすいかと思って」
『うん、ありがとう』
スプーンで掬ってゆっくり冷ます。口の中に入れれば、薄めの味ではあるけど、出汁が効いてるのかすごく美味しい。
『……おいしい』
「よかったです。残してもいいので、食べれる分だけ食べてくださいね」
そんな所にふうに言われたけど、美味しさと昨日からの空腹のおかげで食べきってしまった。
『ごちそうさまでした』
「お粗末さまです。それじゃ薬、飲みましょう」
差し出された薬を飲んで、やっと一息。
『今、何時?』
「……もうすぐ10時です。すみません、この部屋時計がなくて……スマホ持ってないんですか?」
『ちょっと今は開けない』
たぶん、ここで電源をいれれば位置情報がわかるはず。バーボンにここまでしてもらって、これ以上迷惑はかけたくない。
『私の服乾いてる?』
「……ええ、ある程度は」
『なんでもいいから取って。着替えたい』
「着替えてどうするんですか」
『これ以上迷惑かけたくないの。ご飯も薬ももらったし、もう大丈夫だから』
「駄目です。寝ててください」
『駄目って……』
「今その状態で外に出ればまた悪化しますよ。次は誰に拾ってもらうつもりですか」
『……』
「迷惑なら初めから連れてきません。少なくともその風邪が治るまでは、ここにいてください」
『……わかった。でも、シャワー浴びて着替えたい。汗かいたから』
「駄目です。着替えは新しいものを貸します。体は……拭くのでそれで我慢してください」
言われたことに理解が追いつかない。体を拭くって……え?バーボンが?またまたぁ……そんなわけ……
「……服、脱げますか?」