第3章 コードネームと小さな天才
ふと、下からの視線に気づいた。ベルモットの後ろに隠れるようにしている女の子。
『ベルモット、その子は?』
「ああ、紹介しなきゃね。ほら、前にいらっしゃい」
そう言われて出てきた子は、見た目は小学生くらい。それでも、視線がキツめでクールな感じ。
「自分で名前、言えるかしら」
「……宮野志保、10歳」
……ずいぶん大人びた子だ。
『この子、どうしたの?』
「その話は後、部屋でするから……先にラボへ連れていかないと。じゃ、行きましょ」
そう言ってベルモットはその子を連れて行ってしまった。
『不思議な子……2人はあの子のこと知ってるの?』
ジンとウォッカに聞いてみる。
「ああ、なんでも両親がこの組織の科学者だったらしいですぜ。不運にも亡くなったって聞きましたが……」
「あの歳でもなかなか使えるやつらしいからな……詳しいことはベルモットに聞け。じゃあな、マティーニ」
『うん、またね』
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しばらくして、ベルモットが訪ねてきた。
「それで、あの子のことなんだけど……」
両親がこの組織の科学者だったこと、そして亡くなっていること、私と同い年の姉がいること、あの歳で知識量が並の科学者を超えていること、ボスからの指示で留学中、一時帰国していること。
『そうなんだ。すごい子なんだね』
「ええ、もし良ければ仲良くしてあげて」
『私が?』
「あの様子なら、留学から帰った後コードネームをもらうはずよ。そうなると末端の構成員とは会いにくくなるから……必然的に姉ともほとんど会えないはず。気楽に話せる相手はいた方がいいでしょう?」
『そうだね……話してみる』
「貴女だって、科学の知識に関して人並以上だから話が合うと思うわ」
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そうは言ったものの、なかなか志保とは会えなかった。
コードネームのことを知った他のメンバーは、会う度におめでとうって言ってくれたからむず痒い気持ちだった。
任務も今まで以上に重要なものを任されるようになったし、できることが増えるのは嬉しかった。
そんなある日、ジンに呼ばれた。
ジンはアジト内じゃなくて、ホテルを点々と泊まり歩いてるらしい。指定されたホテルへ行き、部屋は……ここか。
コンコンとノックする。
『私。入るよ』