第29章 譲れないもの※微
ゆっくり、でも確実に3回。トン、トン、トン、と左手の人差し指の指輪を右手の人差し指で叩く。長い間体重を支えていた手はそれだけで限界で、またすぐに離れていく。
せめて……みんながこのホテルから遠ざかっていないことを願おう。
ジンは……怒るだろうか。それとも呆れられる?どちらにしてもいい反応はされないかな……。
そういえば……どうしてバーボンは今日、指輪を渡してきたのだろう。こうなることを読んでいた?それとも何かの計画の内?もし後者なら、一発殴らせてもらおう。
思考が正常に働くほど、男達の触り方には何も感じない。強いて言うなら嫌悪感があるくらい。胸の先端や下を触られ、舐められているにも関わらず、気持ち良さなど微塵もない。
「チッ、こいつ喘がねぇのかよ」
「しかも全く濡れねぇし……こんな事になるならローション用意すりゃよかったな」
「仕方ねぇなぁ……一発目はナカでって思ってたけどよ」
「ああ、濡れてねぇとこに突っ込んでも気持ちよくねぇしな」
そう言うと男達は自身のソレを取り出して、自ら扱き始めた。精液を潤滑剤にするつもりらしい。
ふと、視線を上げて椅子に座った女を見る。面白くなさそうに……というより怒っているようで、こちらを睨みつけながら親指の爪を噛んでいる。
「なんなのよあんた……ほんとに人間?」
『それ以外に見えるの?』
「気味が悪い……なんで彼もこんな女がいいのかわからないわ」
『彼……ね』
「なによ、譲る気になった?」
『名前すら教えてもらえないなんて……いい加減諦めたら』
「うるさい!」
女が叫んだと同時くらいに白濁が右の頬にかかった。それを皮切りに次々と体に白濁がかかっていく。
「やべぇ……エロすぎ……もう一回抜けるかも」
今更どれだけ汚されたって何も思わない。今までに何人に抱かれたかなんて覚えてないし、触れただけのヤツも含めれば相当いるんじゃないか?
本気で気持ちいいと感じるのはジンだけ……バーボンとライの時は薬を使われてたからそのせい。
男達の何人かは自信を扱き続け、残りのヤツは吐き出された白濁をナカに塗りつけ始める。
その時、微かに聞こえたピッという音。女も聞こえたようで、ドアの方を振り返った。解錠された音……?
「誰?パパ?」
女が立ち上がる。しかし、ドアは開かれるのではなく、内側に倒れ込んできた。