第29章 譲れないもの※微
『……引き金を引いた瞬間から、貴女も犯罪者よ』
「なに……脅してるつもり?そんなの聞くわけ……」
『脅しじゃない、事実よ。私が死ねば尚更……ね』
「うるさいうるさい!死にたくないならさっさと言いなさいよ!!」
『しつこいわね……断るって言ったでしょ』
「ふんっ、素直に聞き入れなかったこと後悔すればいいわ!!」
女はそう吐き捨ててドカッと椅子に座り込んだ。そして周りの男達を見て不敵に笑った。
「その女、好きにしていいわよ」
「へっ……それじゃ遠慮なく……」
ゾロゾロと男達が近付いてくる。ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら。
「まさか、金が貰える上にこんないい女抱けるなんてなぁ……」
「すげぇラッキーだな……」
舐舐め回すような視線から逃れることはできず。まあ、こういう視線を向けられるのは初めてではないし。
『一つだけ、貴女勘違いしてるようだから言っておくけど……』
「何よ今更……怖くなった?でも、辞めてあげないから!」
『……貴女の父親が怖がってるのは私じゃなくて、私の上にいる人間。私に何かあれば、命の保証はできないわ』
「そんな脅し、乗るわけないでしょ!」
『忠告、したわよ』
「変な強がり見せちゃって……泣いたって叫んだって助けなんか来ないわ!」
「おしゃべりはその辺で終わりにしてもらおうか……」
男の一人がどこからかナイフを取り出した。そしてその刃はドレスの中央を引き裂いた。
……デザインが素敵だったからまた着ようと思ってたのに。
「やっぱりいい身体してんなぁ……ん?なんだこの汚ねえ傷」
腹部の傷跡をナイフの先がつぅっとなぞった。
汚い……だと?自分の誇りでもあるこの傷を侮辱されたようで怒りが湧いた。身をよじって脚を上げようとしたが、それに気づかれたようでそれを阻止するように掴まれた。そして、そのまま体ごと柱にグッと押さえつけられる。
「ははっ、怖くなったか?大丈夫っだって、気持ちよくしてやるからさ」
ブラも中央を切られてふたつに割れた。胸があらわになり、男達の視線がそこに集まるのを感じる。
「なんだよ、結構遊んでんだなぁ」
体中についたキスマークを見てか、誰がそう言った。頭上の鎖がまた音を立てる。男達の手が私に向かって我先にと伸びて……そこで、やっと左手の人差し指に右手が触れた。