第28章 女子会
明美&志保side―
「亜夜も大変だね」
「それなりの立場にあるってことでしょ」
「あーあ、志保もそうなるんだもんね」
「やめてよ。私は薬を作るだけ。あの薬を……完成させるだけだから」
「無理はしないでね。話くらいなら聞けるから」
なんとなく気分が落ち込んだような志保に、明美は言った。料理はほとんど食べてしまったし、飲み物ももう終わりそう。でも、勝手に頼めないしな……。
「お姉ちゃん」
「ん?」
「その……両親のこと、教えてくれない?」
「いいけど……急にどうしたの?」
「ずっと聞きたかったの。でも、電話やメールじゃ聞けないし……こうして2人きりになれることもなかったし」
「そうだよね……じゃあ、話せるだけ話すね」
以前、父親が勤めていた製薬会社が倒産し、町医者をしていたこと、あるグループから何度も勧誘されていたこと、断り続けていたのに何かのきっかけでそこへ入ることになったこと……。
「……そうなんだ」
「私も小さかったし、事情はよくわからなくて。あ、そう言えばね」
「なに?」
「町医者をやってる時に、よく怪我して来てた男の子がいてね……」
「男の子?」
「うん。金髪で肌がちょっと黒かったから、たぶんハーフの子かな?そのせいで喧嘩ばかりしてたみたいで……」
「……」
志保は留学して間もない頃、外見のせいで虐められていたことを思い出した。どこの国でもそういうことはあるのね……。
「でね、お母さんがその子に言ったの」
明美は一度目を閉じた。まるで、その時を思い出すかのように。
「見た目は違っても、みんな赤い血が流れてるでしょって。その言葉を聞いて……」
「……亜夜姉にも同じこと言われた」
「亜夜に?」
「留学先で虐められてること話したら……その言葉にすごい励まされて」
「やっぱり……亜夜は他の人達とは違うよね」
「うん。亜夜姉の方が大変だっただろうに……」
「私達、亜夜に何ができるかな。こんなふうに過ごせるのも亜夜のおかげだし」
「本当にそうだね……たくさん貰ってばかりで、それを返せてない気がする」
その時、ドアがノックされた。入ってきたのは亜夜。
『本当にごめん……あれ、何かあった?』
「亜夜、あのね……」