第28章 女子会
そこまで考えてわいた疑問。
『ちょっと、なんでこのホテルにいるって知ってるのよ』
「さあな」
今日は発信機や盗聴器を見つける機械を持っていない。この車に仕掛けられていたとしても、簡単には見つけられないだろう。
『……最低』
「知るか」
『はぁ……で、何?館内のマップでも見てくればいいわけ?』
「会場自体はホテルの隣にある建物だ。知りてえのはそっちなんだが……」
『……そこならまだ工事中よ』
エントランスへ入る時になんとなく気になったから覚えている。外観的にも微妙だったし、どうせなら両方完成するまで待てばいいのに……なんて思った。
「一度完成してるはずなんですが、2、3日前にまた初めたみたいで。表向きは欠陥が見つかったってなっていやす」
『なるほど。それを見てくればいいの?』
確かにホテルのホームページの写真は、両方の建物が完成した状態だった気がする。工事中の建物に入り込むのは大変だよな……どうやって入ろう。
「その必要はねえ」
電話口の声がジンだったりウォッカだったり……仲良しかよ。
『じゃあ何すればいいの』
「お前が今、することはねえ」
『それならなんで電話してくるわけ?こっちの予定伝えたよね?』
「チッ……」
『怒りたいのこっちなんだけど』
「マティーニ、板倉卓って男知っていやすか?」
『板倉……?ああ、ちょっと前にソフト作らせてた男でしょ?でも辞めたって……』
「その男の居場所を割り出して欲しいんです」
『なんで私?そういうのってバーボンの方が得意じゃない』
「すみません……しかし、急ぎの案件なもので……」
『……わかった。明日中に何とかするから』
「助かりやす。こちらから伝えたいことはそれだけで……」
『あ、じゃあ明日も帰らないってジンに言っといて。それじゃ……』
「おい、てめぇ……」
ジンの声が聞こえたけど無視して電話を切った。そのままスマホの電源は落とす。これ以上、今日の予定を邪魔されてたまるか。
パソコンの電源も落としてさっさと車を出る。思いの外時間がかかった。居場所を調べるのには。よっぽどのことがない限り一時間で終わる。その分、時間は増えた。次の任務は明後日の夕方から。それなら、時間の許すまで明美と志保と過ごそう。
帰るのが明日でも明後日でも……抱かれ方が酷くなるのは目に見えてるし。