第28章 女子会
「だって見たことあるって……」
『気のせいよ、きっと』
あの夜の事は、話すべきではない気がした。
----------------------
飛行機が着く時間になって、ゲートの近くで待つ。明美は妙にソワソワしてる。
『ちょっと、大丈夫?』
「うん……なんか緊張しちゃって」
わからなくもない。こうして2人で迎えに来れるのも初めてだし、嬉しいけどちょっとドキドキする。
ゾロゾロと人が歩いてくるのが見えた。首を伸ばして志保の姿を探す。と、癖のある茶色の髪が見えた。
すぐに名前を呼んで抱きしめたい。でも、目立つ行動はできないから、小さく手を振るだけ。志保も気付いたようだ。
「おかえり」
「ただいま、お姉ちゃん。亜夜姉も。来てくれてありがとう」
『無事に着いてよかった。それじゃあ……』
志保の後ろに立つ護衛に視線を移す。3人もつけるなんて……。
『連絡行ってると思うけど、ここから先は私が預かるわ。お疲れ様』
そう言うと護衛の3人は、軽く頭を下げて立ち去って行った。
『さて……他の荷物は?』
「これだけ。あとは届けてもらうようになってるから」
『そう。それなら……どこか寄りたいところある?』
「ううん。大丈夫」
『わかった。じゃあ行こっか……明美?』
「へっ?あ、ごめん」
駐車場までの道程は、すごく静かだった。話したいことや聞きたいことがたくさんあるのに、人目を気にしないといけない。こういう時間は好きじゃない。
駐車場に着くと、志保の足が止まる。
『どうしたの?』
「これ、本当に亜夜姉の車なのね」
『そっか、まだ乗ったことなかったっけ。でも、見た事はあるでしょ』
「まあ……どうして揃いも揃って目立つ車を選ぶのか、不思議に思ってたから」
『あはは……どうぞ、乗って』
2人を後ろの座席に促して、自分は運転席へ。
『それじゃ、ホテル向かうけど……ちょっと時間かかるから寝てっていいからね』
そして車を走らせて数分後。チラリとルームミラーで後ろを見れば、寝ているのは明美で。
『あれ、気張ってたから疲れたかな……志保は大丈夫?』
「うん。飛行機の中で寝てきたから」
『でも、時差あるでしょ?きっと、生活戻すの大変だよね』
「そう思ったから少しずつ生活時間ずらしてたわ」
『さすがだね』