第28章 女子会
『すみません。人を待ってるので』
あの後、どうにか時間を潰し、明美を迎えに行って空港に着いた。志保が着くまでまだ余裕があるから、空港内を見て回っているのだけど……先程から何度同じ言葉を言っただろう。
「いいじゃん。待ってるのって女の子?だったら3人ずつでちょうどいいでしょ」
ナンパなのだろうけど、とにかくしつこいのだ。何度断っても、どうにかつけてくるのをまいても、また会ったね、と言って近づいてくる。いい加減にして欲しい。
「ねえ、亜夜……」
『ごめん、もう少しギリギリに来ればよかったかも』
「ううん、見て回りたいって言ったの私だもん……」
素顔で来てるからあまり騒ぎは起こしたくないし、何より隣に明美がいる。ただでさえ人が多い場所だし、派手にやらかすと面倒だ。
「ねえ、君はどんな顔してるの?それ取ってよ」
かけているサングラスに手が伸ばされる。ここまでやられるなら仕方ない……と向かってくる手を払おうとした時だった。
「警備員さ〜ん!こっちこっち!」
声がしてそちらに顔を向けると、女優帽にサングラスをした女性。警備員という言葉に反応してか、私達を取り巻いてた男達は足早に逃げていった。
「ごめんね〜知り合いっぽくなかったから、困ってるのかなぁって。余計なお世話だったかしら?」
『いえ、助かりました。ありがとうございます。あの、警備員は……』
「嘘よ。私、そういうの得意なの!あら……貴女、もしかして……」
女性は自身のサングラスを外した。
「えっ……」
明美が小さく声を漏らした。無理もない。藤峰有希子がそこにいるのだから。
「ねえ、貴女。どこかで会ったことない?」
あの夜の事を言ってるのだろうか……しかし、身を明かす気はない。
『さあ……』
「おい、母さん!何やってんだよ!」
「えっ?あら、新ちゃん、この子達困ってたから……」
「それはいいけど、父さん着いたってよ!」
「あらやだ。すぐ行くわ!それじゃあね。変な人達にからまれたら助けを呼ぶのよ」
そう言い残して彼女は去っていった。さっきの男の子と隣にいた女の子……あの時の2人だ。元気そうでよかった。
これで貸し借りはチャラかな。まあ、貸しだなんて思ってなかったけど。なんとなく助けただけだし。
「亜夜、藤峰有希子と知り合い?」
『まさか』