第27章 プレゼント
「……さっさと行くぞ」
そう言って服を持ってくれるジン。
『いいよ、鍵だけ開けてくれれば……』
「てめぇだけで何往復するつもりだよ」
『うっ……じゃあお願いします』
そうは言っても多いから、少なくともあと2往復はしないと無理か……そういえば、ジンの部屋に入ったことあんまりないな……。
開けられた扉の先は黒。壁紙も天井も床も……家具に至るまで全て黒。証明も薄暗くて最低限の明かりって感じ。私の部屋も全体的に黒い物が多いけど、ここまでじゃないしなぁ……。
「……何してる」
『なんでもない』
足を踏み入れた瞬間、闇に包まれるような錯覚に陥った。手に持っている服の色がよく映える。
「ほらよ」
開かれたクローゼットの中は、着回すのに支障のないくらいの服しかない。それも似たような形のものばかり。その中に一着……
『ジン、こういうの着るんだ』
カチッとしたジャケットとパンツ。パーティとかでよく見る組み合わせ。
「……任務で1回着ただけだ」
『そうなんだ。ジン、スタイルいいし似合いそう』
「んなこと言ってねえで残りの服も運べ」
顔を逸らしながら言うジン。もしかして照れてたり……?そんなこと言えば仕返しが怖いので心の内に留めておく。
『よし、これで全部。ありがとう、手伝ってくれて』
ジンの部屋なのに、私の服の方が多く入ったクローゼット。次着る時までそこで待ってて……。
「……これ持ってろ」
『ん?え、うわ、ちょっ……投げないでよ』
空中で何とかキャッチしたそれは……カードキー。
『……どこの?』
「馬鹿か。この部屋のスペアだ。服出す時ねえと困るだろ」
どうしよう……きっと深い意味はないんだろうけど……すごく嬉しい。恋愛漫画とかでよくあるやつ。恋人に合鍵渡して……顔が熱い。
「なんて顔してんだよ」
『……』
熱を冷ますように、顔をジンから逸らしてパタパタと扇ぐ。するとすぐに背後に気配が。
反射的に顔を向ければそのままキスされる。そのまま舌が絡んで……
『んっ……ねぇ、今日はだめ……』
「手伝ってやったろ」
『そうだけど……!』
「納得できる理由なら聞いてやる」
『今日の夕方の便で、志……えっと、シェリーが帰ってくるから……』
「だったらなんだ」
『迎えに行ってそのまま1泊してくるから……ホテルも取ってあるし……』