第27章 プレゼント
予想外の言葉にちょっと驚いた。でも、余程のことなんだろう。母の死より大きな何かが彼女の身に起きたのだ。
『……そっか。きっと素敵な子なんだろうね』
「ええ。私の宝物よ」
いつか会ってみたいものだ。ベルモットがここまで大事そうに話す人に。
「貴女も大変だったみたいね……バーボンのこと聞いたわ」
『ああ……大丈夫だよ』
「本当だったら私がやる事なんだろうけど……ボスもラムもタイミング悪いわね。もっと早くにやってもよかったでしょうに」
『いろんなことあったし仕方ないよ』
「確かにね……でも、無理しちゃダメよ」
『わかってる。ベルモットも無理しすぎないでね』
「ええ……あ、そろそろ切るわね。少しだけど話せてよかったわ」
『私も。それじゃあ、またね』
電話を切ったところで向けられている視線に気づいた。
「……女ってのはずいぶん話が長いんだな」
『ごめん……しばらく会えてないんだから許してよ』
ジンのことそっちのけで、予定より長く話してしまった。いいじゃないか、話題がポンポン出てくるんだもん。
「で?これ、どうすんだよ」
『うーん……あ、ジンの部屋置かせてよ』
「は?ふざけんな」
『ふざけてないし。そういうこと言うなら、クローゼットの中の自分の物全部出してってよね』
「……チッ」
ジンがこの部屋で寝泊まりするようになってから、ジンの物が増えた。当たり前……と言えばそうなのかもしれないけど、それがなくなれば多少の余裕はある。まあ、それでも全部は入らないんだけど。
「……どれ持ってくつもりだ」
『そうだな……着たことあるやつはジンのところ持ってく』
「普通逆だろ」
『だって、忘れて着なかったりしたらもったいないでしょ』
そう言いながらベッドの上に服を出していく。奥の方に手を伸ばせば一度着ただけの服がどんどん出てくる。
「多すぎだ、馬鹿」
『そう言われてもなぁ……』
服を掻き分けていくと見慣れないジャケットがある。いつ着たやつだろう……そう思って手に取ると心臓が跳ねた。
これ……ライのやつだ……結局返せなかった。
「おい、どうした」
『え……?あ、ううん。なんでもない』
そのジャケットは隠すように1番奥へ追いやった。
『……とりあえずこんなものかな』
今の私は普通だろうか……動揺しているように見えてないかな……?