第26章 上書き※
何度もイかされて、何度もナカに出されて。キスマークは増える一方で、身体は限界を迎えていた。それなのに。
「……まだ思い出すんだな?」
『ちがっ、ああっ……も、う……やだぁっ!!』
バーボンに与えられた快楽なんて覚えてない。それは全てジンによって上書きされたのに……。
―僕は……貴女が好きです。
その言葉とその時の光景だけが頭から離れない。
そんな言葉、私には必要ないと思ってた。この先、誰にも言われることのないものだと思ってたのに。あの時はあんな反応をしたけど本当は……
嬉しかった、のかもしれない。明美や志保から言われる「好き」とは違う、あの言葉が。
「てめぇは、俺の物だろ……?」
急に止まった抽挿。聞こえた声は怒りを含んでいたが、どことなく不安そうだった。
『……ねえ、ジン』
「……」
だるくて仕方ない腕をなんとか持ち上げてジンの首に回す。抱き寄せたいけど、生憎それだけの力は残ってない。
『1回だけでいい……嘘でいいから……』
目の端に涙が浮かぶ。ゆっくり息を吸い込んで、ジンと目を合わせた。
『お願い……好き、って言って?』
それでバーボンとの記憶は完全に上書きされるから。
「……チッ」
返ってきたのは舌打ちの音だけで、沈黙が落ちる。言ってくれることをほんの少しだけ期待したけど、呆気なくその思いは散った。
『うっ……あ、あっ……』
動き始めたソレは先程とは打って変わってゆっくり、でも確実に良い所を突いてくる。ジンの呼吸も心なしか荒い気がする。耳にかかる息が熱くて……ジンの限界も近いのかもしれない。
『ジン……っあ、好き、だよ』
「ああ……知ってる」
『ねえ……んんっ……』
私の言葉はキスで遮られた。ジンの舌の動きになんとかついていくだけで精一杯。抽挿は少しずつ早くなっていく。
『は、ああっ……や、イっちゃう……』
「イケよ……っ!」
ガツンと奥を突かれて一気に快感が身体を貫いた。でも、抽挿は止まらない。
『やだ……ね、とまって……んああっ……!』
「……もう少し、付き合え」
身体はイキっぱなしで、もう何が何だかわからない。ただ快楽に溺れていくことしかできない。
「っ……出すぞ」
それに答える余裕はない。そして、ナカに欲が放たれた瞬間、視界が真っ白になってそのまま意識がプツンと切れた。