第25章 本音か嘘か※
亜夜side―
妙な寝苦しさを覚えて目が覚めた。ぼんやりした視界に飛び込んできたのはバーボンの顔。
『……え?』
ぎゅっと抱き締められているのだ。体を動かそうにも力が強くて抜け出せない。それどころか動こうとするほど抱き締める力が強くなる。
視線を動かして時計を見ればまだ8時。いくらか余裕はあるし、焦る必要もないか……シャワー浴びたいけど。
―僕は……貴女が好きです
ふと、そんな言葉を思い出して顔が熱くなった。本音なのだろうか……。
急な恥ずかしさが湧いて、どうにかバーボンの腕を離そうと試みる。すると、バーボンはピクっと動いた。
「……え?」
『おはよう。悪いんだけど離してくれる?』
「え、あ……すみません」
慌てた様子のバーボンと離れていく腕。やっと起き上がることができてぐーっと上へ伸びて首を回す。さて、シャワー……いや、湯船に浸かろう。
『しばらく出ないから……もし、シャワー浴びるなら入ってきていいよ』
そう言い残してバスルームへ入った。昨日はじっくり見る暇も無かったけど内装もアメニティも豪華。シャワーを浴びながら湯船にお湯を張る。全身洗い終わったところで入浴剤の封を切って湯船に入れる。乳白色のお湯はとろみがあり、加えていい香り。
『ふぅ……気持ちいい』
やっぱりお湯に浸かるのが1番。疲れがとれる感じがするし本当に癒される。と、その時、バスルームのドアが開いてバーボンが入ってきた。
「……すみません、思ったより長くて……すぐ出るので」
背を向けたまま言われる。別に1度見てるんだし、あまり気にしなくていいのに。
と言っても私もそろそろ出ないと。これ以上浸かってるとのぼせそう。
出たら髪を乾かして、着替えて……
『……あ』
メイク道具持ってきてない。あるのは日焼け止めとちょっと直すために最低限必要な物だけだ。髪のセットもできない。普段の任務では終わってすぐ帰るので必要ないのだ。だから、その感覚で来てしまって……ドレス着るのにほぼスッピンって。
悩んでも仕方ないか。人目に触れるのはホテルを出て車に乗るまで。アジトまで送ってもらえば……組織の人に見られる分には気にしない。
鏡の前で念入りにチェック。鏡に映る姿は、いかにもドレスを着るのに慣れていない感じ。
「……素顔の方が素敵ですよ」
ドキンと心臓が跳ねた。